幼い日の思い出
弱音は吐かない
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に手を伸ばして、彼女を己の体で包むようにして抱きしめる。力強く、抱きしめる。
「さっ、すけ?」
「お願いだから、痛いって、ないて、くれよ」
懇願の声に、カトナは困ったようにサスケの顔を見た。
幼い子供が浮かべる涙だらけのくしゃくしゃの顔は、綺麗とは言えないけれど。それでも、心を穿つようなそんな表情に、カトナはうろたえた。
何回目かは、もう、忘れていた。
カトナはいつだってイタチに守られていた。
だがそれは、イタチが傍に居る間でしかない。
イタチが忍びの任務で出ているときや、イタチがうちはの家に帰っている時には、結構な頻度でこんなことが行われていた。
イタチの代わりにつけられた暗部の忍びに殺されかけたこともあった。火影によって任命された料理係が作った料理に毒が仕込まれていて、死にかけた時だってあった。ただ道を歩くだけで、投げられる石はあとをたたなかった。
傷つくことは、最早、当たり前だった。
なのに、泣くのだ。
サスケはぼろぼろと涙を流すのだ。カトナが傷ついたことを自分が傷ついたようにとらえて、カトナの痛みを自分の痛みのように考えて、涙を。
カトナはうろたえるしかなかった。
こんな風に心配されるなんて思っていなかったから、カトナは何も言えず、ただ、自分の頬に降り注ぐ雫に首をかしげた。
泥で汚れた赤い髪の毛が、ゆらりと揺れる。
何を言えばいいのだろうと少し悩んで、どうすれば泣き止むのだろうかと頭をひねる。
どうしたらサスケが泣かなくて済むのだろう。どうすれば、サスケが悲しまずに済むのだろう。
悩んで悩んで、けれども何も思いつかず、結局本音を零すことにする。
「ほんとは、いたい、よ」
はっとしたようにサスケが目を瞠る。
カトナはそんな彼を見つめて目を細めた。唇の端から赤い血がつぅと流れていく。
「…なら、ないてくれよ」
「なかっ、ないよ。ないても、なんの、いみも、ない」
泣いて騒いでわめいても、誰も助けてくれない。
声をあげても、あがいても、助けてと叫んでも、届かない手はどうやったって届かないし、聞こえない声はどうしたって聞こえない。
だから泣くのはやめようと幼いころに決めた。
泣くのはやめて、その代わりの行動をとれるようにと決意した。
カトナはサスケの服をもう一度握りしめる。
「だからね」
泥だらけの顔で、カトナはそれでも微笑んだ。
「なくくらいなら、わらいたいよ」
サスケはその言葉に息を呑み、固まった。
そんな彼の耳朶を、兄の声が打った。
「カトナ!? サスケ!!」
「兄さん!!」
いつもは冷静沈着な兄の、珍しく慌てた声に、サスケは涙を止めて大声を上げた。
イ
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