幼い日の思い出
弱音は吐かない
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何をしようとしたのかを隠すかのように、しっぽを巻いて逃げだした男の背に向けて、サスケは手を伸ばす。
しかし、子供の短い腕では、わき目もふらずに走り出した男をとらえることはできなかった。
すぐさま後を追おうとして、しかしそこで躊躇する。
捕まえるのは簡単だ。けれども。
サスケは男の背と丸まったまま動かないカトナを見比べる。
あの男を捕まえて自分の鬱憤を晴らすか。それともカトナから痛みを取り除くか。
二つに一つの選択を迫られて、サスケは瞬時に後者を選ぶ。
どちらを優先すべきかなんて、考える前から分かっている。
サスケは男が消えた方向を忌々し気に一瞥すると、すぐさまカトナのそばに駆け寄った。
「カトナ!!」
そんなに、泣きそうな顔をしてどうしたの。
そう言うつもりで口を開けたけれど、カトナの口から零れたのは、声なんてものではなく。真っ赤な、汚れることを知らない綺麗な赤で。
サスケがさっと顔を青ざめさせて周りを見まわす。
けれど、誰の影も見当たらない。カトナが殴られていたのは、人気の少ない路地裏であったのでさもありなん。
最も、もしいたとしても、誰も助けようとはしなかっただろう。
この里の人間の大半はカトナを九尾の人柱力とみなしていて、カトナのことを病院に送り届けようともしないのだから。
カトナはぼうっとした目でサスケを眺めた。
「サ、ス」
「カトナ、喋んな!!」
サスケは必死に、まだまだ小さな体でカトナを抱える。
忍びである以上、それなりに身体を鍛えているとはいえ、背格好は変わらない。それでも背負えたという事は、それだけ、カトナの体重が軽いという事で。
ほかの子供と比べれば、肉もなく、筋肉量も軽く、骨さえも細いのだろう。がりがりという言葉さえ、彼女の体にはふさわしくない。
細く、脆く、崩れやすい。
その体重に、自分よりはるかに軽く細すぎる彼女の体に、サスケは眉をひそめた。
とりあえず、安全な場所に連れて行かなければ。
自分の家はだめだ。カトナと遊ぶたびに、周囲があまりいい顔をしていないことをサスケは知っている。
となれば、残るはカトナとナルトが住んでいる家だけだ。
あそこならば大丈夫のはずだ
そう考えて走り出そうとしたサスケの足を、
「…だ、め」
弱弱しくもしっかりと服を引っ張る力が止める。
体が未だに痛みに蝕まれているというのに、縋る様に袖を握り続けるカトナは、小さく首を振った。
「ナルっ、ト、にはっ、ね。だっ、め。い、わなっ」
とぎれとぎれに紡がれたその言葉に、サスケは顔を歪めた。
こんな時でさえ自分のことを考えない、弟のことしか顧みない彼女に、サスケは顔を歪める。
そうして、傷に触れぬよう
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