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東方虚空伝
第三章   [ 花 鳥 風 月 ]
四十一話 一時の安らぎ
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いえ確認もせず襲い掛かった事は事実!娘の不祥は親の責任!部下の落ち度は隊長である儂の責任!なれば責任を取って腹ーかっ捌かせて頂きます!!」

 黄葉は何を思ったのか上着を破り捨て腰に佩いていた柳葉刀を抜き放ちその切っ先を自分の腹目掛けて突き刺そうとしたので僕と椛で力尽くで止めにかかる。

「ちょっと!待って!落ち着いて!冷静に!冷静に!」
「止めてください父上!頭を冷やしてください!父上が切腹したって解決しませんから!」

「えーい!離してくだされ!椛も止めるでないわ!介錯を!介錯を!」



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「……御見苦しい所を見せてしまいましたな、申し訳ない」

 あの後騒ぎを聞き付けた住民達と一緒に何とか黄葉の切腹を阻止する事に成功した。椛曰く一旦思い込むととことんまで突っ走る性格、なのだそうだ。

「まぁ二度とあんな事をしない様にはっきり言っておくけど、僕は昨日の事は気にしてないから全然全くこれっぽっちも!分かったかい!」

「承りました」

 黄葉達とそんなやり取りをしていると本堂の方から一人の鴉天狗の女性が現れ、それに気付いた椛がその女性に声をかける。

「あ!文!」

 声をかけられた女性はゆっくりと此方に歩み寄ると抑揚の無い声で話しかけてくる。

「…おはようございます盟主殿、お話は天魔様よりお聞きしています。これからよろしくお願い致します、では……」

 僕の返事も聞かずそれだけ言うと女性は翼をを羽ばたかせ空へと消えていった。呆気に取られている僕に黄葉が申し訳なさそうに言葉をかける。

「申し訳ありませんな盟主殿、あやつの無礼お許しください!」

「いや別に気にはしないけど、随分と暗い子だね、昨日とは大違いだ」

 さっきの子も昨日僕を襲撃した一人で、凄まじく速い動きをしていた子だ。戦闘だったからか昨日は苛烈な雰囲気があったけど今日は全く覇気が無い。

「本来の文はとても明るい子なんですよ。あぁすみませんあの子の名前は『射命丸 文(しゃめいまる あや)』って言うんです。それで天狗族鴉衆副隊長を務めているんです」

 椛がそうあの子、文の説明をしてくれる。でもあれで明るい性格ね、とても信じられないな。

「…先の一族襲撃で我々は多くの同胞を失いました。親兄弟等様々ですがあやつは恋人も亡くしたのですよ。鴉衆隊長を務めていた仁智勇を兼ね揃えた男でしたが鬼の一人に討たれたらしいのです」

 黄葉は襲撃の時の事を思い出したのか拳を硬く握り締め表情を曇らせる。その後椛が説明の補足をしてくれた。
 どうやらその恋人とやらは真っ黒い鬼の影の様なものに取り込まれ、出てきた時には死人の様な状況でそのまま灰になったそうだ。文はそ
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