暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十九話 洗礼
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
長引くと市民の間から和平に対して疑義が出かねません、交渉の打ち切り等と言う声が出る可能性も有ります。ですので和平交渉そのものよりも両国首脳によるトップ会談を優先させるべきだと考えています」
あら、視線が強まったな。

「首脳会談で和平条約の大枠を合意する。後はその合意に沿って交渉を進めれば良いでしょう。その方がスムーズに和平交渉が進むと思います。出来れば八月までに首脳会談を行いたいですね」
皆が顔を見合わせている。少し間が有ってからターレル副議長が咳払いをした。

「確かに首脳会談で合意が出来ればそれに越したことは無い。しかし可能だろうか? これまで国交が無かったのだ、いきなり首脳会談といっても帝国は二の足を踏むのではないかな。こちらも市民が騒ぐだろうし議会も煩いだろう、色々と条件を押付けようとするに違いない。簡単には行かないと思うが……」
ウンウンと皆が頷いている。安心し給え、俺が知恵を貸してあげよう。原作知識と言う知恵を。

「首脳会談の名目は和平交渉に拘る事は有りません。同盟市民、帝国臣民が納得する名目であれば良いでしょう」
皆、訝しげな表情だ。
「そんな名目が有るかね?」
「有りますよ、ターレル副議長」
フッ、聞いて驚け。

「捕虜交換です」
俺が宣言すると何人かが“捕虜交換”と呟いた。アレ、反応は今一つだな。どうやら分からないらしい。
「同盟、帝国には捕虜がそれぞれ二百万人程居るはずです。それを交換するのです。捕虜交換は軍では無く政府が行う、調印式はイゼルローン要塞で両国首脳により行われます。如何です?」

彼方此方から“ウーン”という呻き声が聞こえた。ようやく納得が行ったらしい。
「なるほど、捕虜交換か。調印式にかこつけて首脳会談を行うという事か」
「これなら同盟市民も反対しない、いや大賛成だろう」
「帝国もだ」
「議会も賛成せざるを得ない」
興奮するなよ、そんなに。

「しかし大丈夫か? イゼルローン要塞に行くのは危険じゃないか? 場合によっては囚われるという事も有るぞ」
「大丈夫だろう、調印式が無事に終了しなければ捕虜交換は行われないのだ」
「なるほど、そうだな」
その通り、問題は無い。今の帝国に捕虜交換を反故にするような余裕は無い。平民達を踏み付けにする事が出来る位なら貴族達をフェザーンで始末しようとは考えない。むしろ捕虜交換は政府の求心力が高まると喜ぶだろう。

「宜しければ捕虜交換と首脳会談の件、レムシャイド伯に相談したいと思いますが」
俺が問い掛けると皆がトリューニヒトに視線を向けた。それを受けてトリューニヒトが頷いた。
「良いだろう、上手く行けば一気に和平が近付く。交渉してみてくれ」

「分かりました。進展が有りましたら御報告します。それと諮問委員会は表向きは外交
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ