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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十九話 洗礼
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きたのは中年の女性記者だ。なんか目付きが厭だな、変に絡むような目で俺を見ている。時々いるんだよ、こういう目をしている奴。こっちを困らせて喜ぶんだ。猫が鼠をいたぶって喜ぶ感じかな。さりげなく答えるか。

「戦争を何時までも続けている事は出来ませんから政府が帝国との間に和平をと考えるのは当然の事だと思います」
「貴方は熱心な和平推進派だと聞きましたが」
「熱心かどうかは知りませんが宇宙が平和になってくれればと願っています」
あ、嬉しそうな顔をしている。変なスイッチを押したか?

「それは貴方が亡命者である事と関係が有るのでしょうか?」
俺が亡命者だからこれ以上帝国人を殺したくない、だから和平を願っている、そうしたいみたいだな。私情で動いている、そう叩きたいんだろう。うんざりだな、クズ共が。トリューニヒト、お前さんは偉いよ。こんなクズ共を相手にして曲がりなりにも政治家をやっているんだから。俺には到底無理だ。にっこりオバサンに微笑んだ。

「残念ですが関係ありませんね。人を殺し過ぎて戦争に飽きた、人殺しにウンザリした、それが和平を望む理由です」
「……それは」
鼻白んでるな、ザマアミロ。もう一押ししてやるか。

「ジョークです。面白くありませんでしたか?」
「……」
困ったような表情をしている。笑って良いのか判断出来ないらしい。
「本当はこれ以上戦争を続けると人殺しが大好きになりそうで怖くなったからです。あれはクセになりますからね」
フフフっと含み笑いを漏らした。顔面蒼白、快感だな、これこそクセになりそうだ。トリューニヒトは苦笑している。やっぱりお前は性格が悪いよ。

その後は面倒な質問は出なかった。適当に切り上げて最高評議会の会議室にトリューニヒトと二人で向かう。時々トリューニヒトがクスクスと笑った。やっぱり俺はこいつが嫌いだ、俺で遊ぼうとするからな。会議室の中に入ると拍手で迎えられたが無視して円卓テーブルの席に着いた。

「お見事。マスコミの連中も君には一目置くだろう」
「言っただろう、レベロ。彼は政治家に向いているって。私の考えでは軍人より政治家の方が適性が優れていると思うね」
レベロとトリューニヒトの会話に皆が頷いた。人殺しよりも嘘吐きの方が向いていると言われても少しも嬉しくないんだが……、溜息が出そうだ。

「ところで諮問委員長に尋ねたいのだが帝国との和平交渉、君はこれを如何考えているのかな。具体的にどう進めるつもりなのか確認したいのだが」
ネグロポンティが窺うような表情で確認してきた。和平がどうなるかは軍の予算を左右する。国防委員長としては気になるところだよな。他の連中も俺に視線を集中してきた。内心では“予算が〜”と叫んでいるだろう。

「和平交渉は迅速に行い条約を締結させる必要が有ります。交渉が
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