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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十九話 洗礼
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情で俺を見ている。
「私にはそのような懸念の声は聞こえませんが、どなたが仰っているのかな?」
「……」
「彼の若さが職務において障害になるとは思えません。地球教、フェザーンの危険性を最初に指摘したのはヴァレンシュタイン大将ですよ。その事を忘れないで頂きたい」

七三分け! 一部識者なんて曖昧な言い方するんじゃない! 若すぎるから不安だ、嫌いだって正直に言えばいいじゃないか。小細工するからトリューニヒトに良い様にあしらわれるんだ。全く使えない。俺はこんな仕事やりたくないんだ、もっとガンガン言えよ。何時でも辞めてやるから。

「政府の最大の懸案事項は帝国との和平ですが最高評議会諮問委員会がそれを受け持つと聞いています、間違いありませんか?」
「間違いありません。外交委員会が立ち上がるまで諮問委員会がその職務を代行する事になるでしょう」
ざわめきが起きた。多分、“あんな若造に出来るのか”なんて言ってるのだろうな。

「政府は帝国との和平を考えていますがヴァレンシュタイン大将は亡命者です。その事が和平問題に与える影響をトリューニヒト議長は如何お考えになりますか?」
また眼鏡だ。
「影響と言いますと?」
にこやかにトリューニヒトが問い掛けた。タヌキだよな、記者が何を言いたいか分かっているだろうに。

「言い辛い事ですが和平交渉に置いて帝国側に有利になる様な行為をするのではないか、そういう事です」
言い辛い? とてもそんな風には見えん、眼鏡は皮肉に満ちた表情をしている。俺の事、嫌いなんだろうな。亡命者の若造が軍、政府の上層部に居るなんて面白く無いんだろう。トリューニヒトが笑い出した。

「彼が軍において挙げた功績をお忘れかな。武勲だけではない、兵を守るために総司令官を解任することまでした。保身や私利私欲を図る人間に出来る事ではない。私は彼ほど誠実で勇気のある人間を知らない」
彼方此方でウンウンと頷く姿が有る。お前らなあ、トリューニヒトに簡単に説得されるなよ。

俺は本当に最高評議会諮問委員会委員長なんてのはやりたくないんだ。それを皆で押付けやがって。ここで見離すのは酷いだの、俺の協力が必要だの言っているが詰まる所は面倒な事は俺に押し付けようって事だろう。断りたかった、でも出来なかった。連中はレムシャイド伯まで用意して俺を説得したんだ。

“帝国人三千万人の死を無駄にしないためにも卿の協力が要るのだ。トリューニヒト議長達だけではない、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯も卿の協力が必要だと言っている”
三千万人か、断れないよ。生きてる奴の事より自分が殺した人間の事を言われた方が堪える。三千万人という数字を俺は一生忘れる事は無いんだろうな。

「ヴァレンシュタイン大将、貴方は和平について如何お考えですか?」
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