〜幕間〜 白き蓮に休日を
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あった。
だというのに、秋斗は此処に残らないという意味を込めてか答えを教えてくれない。それは何故か。牡丹が思い至った事は一つだった。
「帽子幼女がアレに着いて行くから、ですか?」
「ハズレ、雛里は関係ない。ってかなんで雛里が関係してくるんだよ」
歩調を緩める事も無く呆れた声音で言い放たれ、牡丹は不機嫌になりながらも思考を巡らせていく。しかし、答えが出る事は無かった。
城まで到着し、秋斗は漸く牡丹の方へと振り向く。
「俺はこの土地が好きだよ。白蓮が居て、星が居て、お前が居て、皆が楽しく平穏に暮らしてる。だから……俺は此処に留まってられない」
牡丹はその瞳を覗き込む。
澄んでいた。澄み切っていた。吸い込まれそうな程に黒く、キラキラと輝いていた。だから彼女は何も言えずに、その言葉だけを自身の頭で反芻し続けた。
「此処にいたら出来ない事があるんだよ。ごめんな」
言うなり踵を返し、秋斗は城門へと向かっていった。
呆然と彼を見ていた牡丹の顔は怒りに歪んで行く。曖昧に、ゆらゆらと、彼はいつも自身の全てを明かさない。それが牡丹をいつでも苛立たせる。
「このバカ! 後悔しても知りませんからね!」
「好きなんだから後悔なんざいつでもするだろうさ。それとこの話は俺とお前だけの秘密だぞー」
秋斗はひらひらと手を振って城の中へと入って行った。
牡丹はその場でギリと歯を噛みしめる。
「捻くれ者……馬術の鍛錬の時にその捻じれた心を踏みつけて正してやります」
白蓮様の為に、と心の中で呟いて、彼女も今回の報告と戦後処理を行う為に、肩をいからせて城の中へと向かっていった。
†
牡丹が秋斗に馬術指導を行っていると聞いて、どうにか時間を作って星と共に見学に向かっていた。
正直な所、秋斗の馬の乗り方は変だった。私も人の事を言えた義理ではないが、人馬一体とは程遠い。
月光と名付けられた名馬だからこそ、秋斗の気持ちを読み取ってくれるから動けている程度。
騎馬の練習場で普通の馬を扱わせてみれば、私の第三部隊の奴等にすら劣る動きしか出来ていなかった。
「そんなんじゃここから出て行けばすぐ死んじゃいますよ! 月光に乗れない時が来たらどうすんですか! お前は此処でもっと馬術を磨くべきです!」
何周も何周も、馬を変えて秋斗は牡丹についていこうとしていた。
その度に突き離され、罵声を浴びせ掛けられ、精神的にも肉体的にも叩き伏せられている。
だが……秋斗は何も言わず、黙々と牡丹の背を追いかけ続けている。牡丹もその様子に、貶しながらも秋斗の馬術が改善されるよう適切な指摘を怒鳴っていた。
ふいに、牡丹が後ろに向けて騎射を行った。矢じりが付いていたならば人を殺せる一
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