〜幕間〜 白き蓮に休日を
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と同じならばよかった。しかし彼は違う。
『ただ単に多くを救いたい』のではなく、『現実的に多くを救いたい』のだ。
星とて頭が良いのだから、幽州を出たら自分がするであろう事は分かっている。だが、彼はそれよりも違う所に進んで行くと牡丹は疑っていた。
――幽州を守る為にそれをするのはいいんです。でも大陸を救う為にそれをする事は……
ぶるりと寒気が一つ。
自身の考えが当たっていれば、彼にはこれから耐えようのない苦難が待っているというのに、劉備軍ならばたった一人でそれをしなければならないのだと予測して。
斜め前で気楽そうに歩く秋斗を見据えて、憎らしげに牡丹は言い放った。
「一つだけ聞かせてください。お前は……アレの何に期待しているんですか?」
牡丹には桃香の良さが全く分からなかった。
幾分かの努力はしていても、かなり甘い採点をしても中級文官程度の能力しかなく、武の才は見当たらず。そんな彼女が耳に聞こえのいい言葉ばかりを口にする。
毎日倒れそうになりながら政務に励んでいる白蓮を見てきた牡丹には、ほわわんとして周りからちやほやされ続ける桃香が憎くて仕方なかった。
だから問うてみた。
現実を見ながら劉備軍に居座ろうとしている秋斗がなんと言うか聞いて見たくて。明確な判断材料が欲しくて。
「あいつはただの女の子だ。本当にただの、な。お前に武の才も無くて、今のような経験も無い場合、誰かの為にと義勇軍を立てようと思うか? それも周りに担がれるでなく自分の意思でだ」
「……」
振り向き、目を細めて話す秋斗に、牡丹は言葉を返す事が出来なかった。力も無く立つ事は出来ない。拠って立つ才能が少しでもあるからこそ、誰かの為にそれを使おうと思うのが牡丹の考えだった。
「現実ばっかり見てたら凍土のように冷たいのが世界だよ。才能のある奴の方が断然いいのは間違いない。でもな、才能の無い奴が何かしたらダメなんてのも間違いだ」
反論をしようと口を開きかけた牡丹は、舌打ちを一つして口を噤んだ。
自分の敬愛する主に突出した才能は無い。それでも努力したから、経験を積み上げて来たから今の地位と力がある。
才能が無ければ上に立つ資格がない、等と言ってしまえば幽州の大きな部分を任せられている白蓮を少しでも否定する事になる。
しかし煮え切らない。
秋斗はその心を見透かしたようにふっと息を付いた。
「最初からなんでも出来る奴なんざいない。期待してるのはあいつの心。そして成長する伸び代だ。
お前があいつを嫌う理由は大体想像がついてるけど……それはまだ先の話なんだよ。今は眼前の人に目を向ける時なんだ」
「でも、白蓮様は全部を持ってますよ?」
口を尖らして牡丹が言うと、秋斗は小さく苦笑した。自分もそれは分か
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