〜幕間〜 白き蓮に休日を
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と違って俺は此処から出て行くわけだから……そういう事になるな」
一寸、牡丹は目を見開いて俺を見つめる。次いで苦々しげな表情に変わった。
「……少なくともお前だけは出て行く必要無いじゃないですか。義勇軍よりもこちらの方が厚待遇で過ごせますし、無益な殺生もありませんからアレに着いて行く必要は皆無です。思いましたがお前はアレと似ているようで相容れません。此処で幽州を良くしていく方が性に合ってます」
次は俺が驚く番になった。そこまで観察眼のある奴だとは思わなかった為に。
「お前……なんで……」
「バカですかお前は。お忙しい白蓮様が少しでも楽に暮らせるようにと登用する人員を見てきた私が、お前如きを見抜けないと思ってたんですか?」
思わず言葉が零れた俺に厳しい瞳を向けて言い返してきた。
確かに牡丹は白蓮が政務で忙しいからと手が回らない案件を任されている為に不思議な事ではない。
呆気にとられている俺を見つめて、彼女はため息を一つ落とした。
「はぁ……まあいいです。とりあえず、仕方がないので馬の扱いは教えてあげますよ。対価として白蓮様と私に店長が作るお菓子の試作品を十個献上して貰いますけどね」
ツンとそっぽを向いた彼女はこれ以上何か言うつもりは無いらしく、口を真一文字に引き結んで馬を少しだけ離した。
――うん。確かにここでいつまでも平穏を守る為に過ごせる方がいい。でもな、桃香がこれからどういう風に成長していくかは決まった事柄じゃないから、俺は出て行くよ。ごめんな。
心の中で牡丹の素直じゃない気遣いに謝って、俺達は無言のまま今回の賊討伐に向かっていった。
†
賊討伐が終わり、白蓮の待つ城へ向かう街中で牡丹は苛立っていた。
討伐前に自身で言った言葉は本心。
前までは秋斗が何処へ行こうと知ったこっちゃないと思っていたのだが、秋斗が桃香達とは違うと分かってしまうと、これからの白蓮の為に手放すのは惜しいと思ったからが大きな理由である。
仕事の面でもある程度なんでもこなし、星と同じ武力を有し、白蓮の仕事負担も精神負担も減らす事が出来る彼は幽州発展には重要な存在だった。
ただ……その男が残る事は無いとも確信していた。
一つは劉備軍にして桃香色に染まらない異質な彼が、桃香に対して期待をかけているのが見て取れたから。
一つは彼が初めての賊討伐の後、雛里の事を無意識の内に気に掛けている事から。これについては星も同様の見解を持っていた。
そして最後に、彼が多くの誰かを救いたいと願ったから。
大陸の疲弊した状況は牡丹とて理解している。本来は大陸を良くする為に桃香に着いて行こうとしていた所を考え直した星と散々話し合っていたから余計に。
多くの人を救いたいという願いが星
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