第二部 vs.にんげん!
第19話 なんにもかくしてないっ!
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今、何を考えてたんだい?」
「……別に、何も」
「ならいいんだけど」
アッシュは五歩ほど離れたところで、ウェルドを待っていた。
「誰のせいでもないんだ。ウェルドのせいでも、ノエルのせいでも、ディアスのせいでも。凶戦士化したのがおれでも、全然おかしくなかったんだ」
ウェルドは無言で繰り返し頷いてから、大股で歩きだした。今何を言ったところで、自分もアッシュも欺けない。まして町の静けさなど。ため息しか出ない。
そういえば昨晩は悪夢を見た。フルカラーでリアルだった。夢の中では、夜中に自室を出てディアスの部屋に行くと何故かディアスが椅子に座って本を読んでおり、入室したウェルドを睨み殺さんばかりの形相で睨みつけてくるのだ。が、それでよかった。憐憫や同情や共犯意識を示されるほうが死にたくなる。
「何でそんなに不機嫌なんだよ」
と尋ねると、
「それは貴様の勝手な自己投影だ。不機嫌なのは貴様の方だ」
と言われるので
「じゃあお前は何で平常心でいられるんだ」
「あの殺戮は俺の責任ではない」
それが答えだった。
「よくそんな事言えるもんだな」
カッとなってディアスの顔をぶん殴ると、首が胴体からもげてゴトッと床に落ちるのでウェルドはびっくりしてしまい、天井まで吹きあがる血しぶきを浴びながら「うわぁしっかりしろ」と胴体を揺さぶると、床に転がるディアスの生首が目を開けてやはりギロリと睨み、
「本体はそちらではない」
と言うので薄気味悪かった。
教会に入るが、礼拝室にティアラはいなかった。併設の病院の大部屋に入ると、そこにいる人達の視線が冷たい雨のように降ってきた。立ちこめる脂っこい死臭が、窓を染める雪の静けさに華を添えていた。病床数が足りず、床にボロきれが敷かれ、直接人が寝かされている。皆手足がなかったり、あっても腐ったりしている様子が見受けられた。
「ウェルドさん」
ティアラがいそいそと寄って来た。
「あちらでお話ししましょう」
ティアラはウェルドを礼拝室に連れて行った。目の下に隈が浮き、やつれ、かなり疲労している様子だった。なにせ一人であれだけの数の怪我人と、ディアスと、それに加えこの前までは自分と、更にその前はノエルの面倒を見ていたのだ。あのカドなんとかっていうネズミみたいな顔をした血色の悪いアルコール漬けのゆすりたかり貧弱コソ泥最低最悪人間のクズ野郎は手伝うまい。
「ごめんな」
つい、そんな言葉が口を衝いて出た。言った直後に後悔した。自分がしたことの大きさと、自分に言えることの短さに、目もくらむような隔たりを感じたからだ。何を言っても無力感を深めるだけだ。ティアラが微笑むので、尚更辛かった。
「仕方がなかったんです……それに、ウェルドさん、今はあなたのお力が必要なんです」
「俺の?」
「はい。まずはウ
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