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王道を走れば:幻想にて
第三章、その4の2:拳と杖
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「叙任式については、以上の通りだ。三人においては、国王陛下の英断を粛々とお受けになるのが筋かと考えておるのだが・・・」
「・・・納得できません。私達はその決断に至った本当の理由を聞く権利があると思いますが」
「そう言われてもなぁ・・・」

 口元を隠しながら、静かな声でレイモンドは言う。祭りの盛況の蛮声に意識を取られる事無く、彼の机の前には三人の者達が立っていた。第三王女コーデリア、近衛騎士アリッサ、そして異界人の熊美である。
 不満顔の王女に向けてレイモンドは続ける。

「コーデリア王女。此度の叙任式は実に目出度きものだ。クマミ殿に加えて新たにケイタク殿もまた誉ある王国の一員となるのだからな。これの何処に問題があろうか」
「御座います。確かにお二人が私達と同じ旗を仰ぐ事に異論はありません。それは喜ばしき事ゆえ、歓迎させていただきます。ですが三人に一方的に課される務めに付きましてはーーー」
「王女よ。これは自然の摂理だ。栄達を重ねる者が、それに相応しき道を行く。其処に微塵も、邪な情は入っておらん。これはクマミ殿、そしてアリッサ殿御両人も御理解頂いていると認識しているが、如何に?」
「・・・理解は、しております」
「同じく。異論の余地は御座いません」

 ゆっくりと言ったアリッサと比較して熊美は澱みの無い言葉である。コーデリアは思わず鋭き視線を送るが熊美はそれを無視するかのように執政長官を見遣るだけだ。
 コーデリアには大きな不満があった。数少なき自らの理解者である三者が、叙任式を機に一気に己から離れてしまうと、執政長官から一方的に言われた事が。それも式の直ぐ後に、である。王国に仕える騎士となる以上仕方の無い事であるが、自分が与り知らぬ所であっさりとそれが決まっていた事には、どうしても反感が生まれてしまうのだ。何よりも友人と離れ離れになる苦悩がある。今ではそれが怒りと取って変わり、言動の激しさを催している。

「・・・レイモンド執政長官」
「何かな、コーデリア第三王女」
「・・・国王陛下はこの取り決めをご自身で考えた上で御決断あそばされたのですか?」
「不敬であるぞ、王女よ。仮にも国王陛下の御心を一方的に窺い知ろう等と考えになるのは。況や口にするのもだ。全うで厳粛な教育を受けた王女とは思えぬ発言だ」
「っ・・・執政長官、返答や如何に」

 今までにないくらい不遜な言葉にアリッサが思わず目を開いて王女を見遣る。王女の怒りの瞳は、静かなままのレイモンドの態度をじっと睨んでいた。

「私が陛下より承った事は、ケイタク殿とクマミ殿、アリッサ殿に叙任式以降の予定を伝える事。ケイタク殿は任務のため此処には居らぬ。明日伝えるとしよう。
 よって私の義務は既に果たされたもの見る。これにて失敬するよ、御三方。別の部屋で政務が
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