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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
7 「『ただいま』」
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ばかちんって……ちゃんとベッドに入ってるだろ、菖蒲兄」

 苦笑した凪は少し赤い顔で、再び視線を外へ移す。
 怪我の影響か慣れない環境でのストレスか、はたまた薄着で凍土に行ったその代償か。ギルドの手配した小ぶりな飛行船が極寒の町グプタを去ってから一週間、凪はなかなか下がらない熱と身体の倦怠感に暇を持て余していた。学者や王侯貴族でもないとそうそう見ることのできない雲の位置からの下界の俯瞰は興味深かったが、それも延々続く砂ばかりの景色に気が滅入っているのも事実である。そろそろ渓流にさしかかっても良いころなのだが、まだ僅かに弧を描く地平線に緑の影は見えない。
 凪が気を失ってそれから。
 ガラゴロと荷台を引きずって現れたアイルー達に彼を頼むと、結局何の役にも立たず意気消沈した双子のメンタルケアをしつつ菖蒲たちはベースキャンプへ向かった。
 猫共の話によると、すでに本部には凍土の異変についての連絡は回っているようで、近々腕の立つハンターがこの調査に当たるらしい。正直これきり凍土に縁を持ちたくない菖蒲としてはどうでもよい話であったので、詳細は知らない。あとはギルドの方が何とかするのだろう。凪が危うく命を落としかけたのだ、彼が凍土に良い印象を持っていないのは当然のことであった。
 彼らでなければ死者が出ていたであろう、ギルドの事前調査ミス。そのお詫びとして、ハンターズギルドは特別に飛行船を貸し与えたのだった。これならばユクモ村にも1週間程度で帰れる。船長によると、今日の夕方にも到着するとのことだ。

「俺風薬膳スープ、俺風豚バラ生姜焼き、俺風あんかけ野菜だ。ありがたく残さず食え」
「……」
「俺風スタミナ定食。おら、どうした。食欲無え訳じゃねえんだろ? 遠慮すんな。わざわざお前の為だけ(・・)に俺が作ったお前だけ(・・)の俺風スタミナ定食だ。誰も取りゃしねえよ」
「あー…いや。いただくよ。いただく、けど……」

“俺風”って、何。

 その問いは口にしてはならない。医者が作ったのだから確かに栄養面などは申し分ないのだろう。ないのだろう、が、あまりに見た目が口に入れるのを拒否したくなるものなのだ。

「なあ、菖蒲兄。このスープ……なんで黒いん」
「ん? ああ、出汁に蟾酥(センソ)犀角(さいかく)、あと乾燥ミミズにモグラの黒焼きが入ってるからな。黒焼き入れたから色移りしたが、問題ない。食える」
「……センソ?」
「旧大陸で手に入れた動物生薬でな、蝦蟇(ガマ)の耳から取れる分泌物だ。外傷に効能がある。お前擦り傷だらけだろ。犀角は風邪に良い。ミミズとモグラは解熱効果があるから入れた。中身は普通だぞ。長ネギだろ、ニラだろ、あとショウガも入れたっけな…」

(……カエルって、耳、あるんだー……)

 9割5分方どうでもい
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