XY
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二日前、六月十三日を以って美鶴がサポートから戦闘要員に復帰した。
もっとも、それで急激に何かが変わったわけではない。
少なくとも次の満月までまた地道にタルタロスを昇って行くだけなのだから。
「アヴァターラ、か」
今は平日の昼間。学生ならば学校に行っている時間帯だが生憎と俺は別だ。
俺は今、図書館で調べものをしている。
こんな時間帯と言うだけあって人はまばらで落ち着いて調べものに専念できるのはありがたい。
「……ヴィシュヌの十番目の化身ねえ」
ペルソナの多くは、神や悪魔と言った幻想の存在の名を冠している。
俺も例に洩れず神の名を冠するペルソナを使用している。
心理学で言うならばペルソナは自己の外的側面を指す言葉だ。
例えば周囲と付き合うために嘘を吐くのもそれに当たる。
しかし――――超常の力であるペルソナは別だ。
抑圧された内面、外には出ない……謂わばもう一人の自分。
たかが人間の裡なる顔に神の名を冠すのはどかと思わないでもないが……
それ自体は自分で付けたものではない。勝手に認識していたのだ。
自分から飛び出したペルソナの名がカルキであると。
では、そこに意味はあるのか? そう思って神について調べようと思い立ったのだ。
「永遠、時間、汚物を破壊する者」
俺の使うカルキはヒンドゥーの神であるヴィシュヌの顔の一つ。
カルキの役目は一つ――――旧き世界の破壊。
世界が崩れゆく秩序が失われた暗黒の時代を破壊し、次なる黄金時代へと移行させる役目を担っている。
かつてエリザベスは俺を破壊を目的とした旅をしていると言った。
成るほど、カルキの役目とも合致している。
しかし、しかしだ。破壊を担っているとして俺は何を壊せば良いのだ?
既知感の破壊? 確かにそれは俺の至上目標だ。だがどうにも腑に落ちない。
破壊を望む俺の内面としてカルキが現れた――確かに筋が通っているようにも思える。
「だが……」
既知と言う曖昧な概念を破壊する術などカルキは持ち合わせていない。
直接戦闘能力は高いがそれだけ。コイツを使い出してからも既知はずっと続いている。
だが既知とはまったく無関係にも思えない。であれば何だ? 何を壊す?
神話のように世界を? この世界を? そんな力も持っていない。
リミッターがかかっている以上全力ではないのは百も承知。
しかし、どれだけ強い力を持っていても世界を壊すには繋がらない。
人類を皆殺しにでもしろと? あるいは惑星一個を破壊しろと?
「……それもおかしな話だ」
ならば影時間と言う不自然な世界を破壊すると言うことか?
既知の根源が影時間であるならば一応の納得はいく。
が、そもそもの話、既
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