XY
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知と影時間に繋がりはあるのか?
美鶴の祖父が原因で生まれた影時間、それそのものが既知を生み出す原因だと仮定しよう。
ならば何故俺だけ? 他のペルソナ使い達は既知など感じていないのに。
俺が始まったのは確かに影時間が生まれた年と合致しているが……
「俺は影時間から生まれたシャドウか何かか?」
それも違うだろう。S.E.E.S.に入部する際に行った身体検査の類でも問題はなかったのだから。
シャドウか何かだとしたらその時点で拘束なり何なりされるはずだ。
では影時間から生まれたもっと別の何か?
「ハ! エイリアンか何かだってんなら面白いんだがね」
完全な根拠なしの勘でしかないのだが、俺の仮説は総て正解ではないような気がする。
堂々巡りの思考。頭がパンクしてしまいそうだ。
調べものに来て余計に考えごとが増えるなんて笑えない。
更に最悪なのはこうやって頭を悩ませているこの瞬間――――それにもまた既知感を覚えるのだ。
「最悪な気分だ……糞が」
苛立ちのままに図書館を出て近くの公園にあったベンチに腰掛ける。
午後の日差しは鬱陶しいくらい強くて苛立ちを加速させた。
閉じた円環の中を、それでも先に何かがあると信じて無様に駆け続けているような感覚。
「……ハムスターって偉大だなぁオイ」
誰に言うでもなく零した独り言だったが、
「――――キヌゲネズミ亜科に属する齧歯類がどうかされましたか?」
それに答える女が一人。
午後の陽光を浴びてキラキラ光る灰銀の御髪。
サイケデリックな青一色のコスチューム――――エリザベスだ。
「ああ、アイツらってさ飽きもせずに滑車の中を走り続けてるだろ?」
「そうなのですか?」
「そうなんだよ。でさ、それってすげえことだと思うんだわ」
本能なのか何なのかは知らないが、羨ましい。
「それで、今日もお出かけかい?」
「はい。あなたに逢えると思い外へやって来た次第でございます」
「……俺の居場所が分かってたのか?」
「いえ、気の向くままに歩いておりましたらあなたに出会えました」
真っ直ぐこちらを見つめる黄金の瞳に虚偽の色は見えない。
「成るほど。赤い糸で結ばれているのかもな。で、どうする? どこ行きたい?」
気分転換も兼ねてまた彼女の奇行に付き合うのも悪くはない。
そう考えての提案をエリザベスは笑顔で受け止めた。
「では、巖戸台を案内して頂けますか?」
「オーライ。じゃあ、行くかね」
二人連れだって歩き出す。肩が触れ合うか触れ合わないかの距離。
「ん……」
初夏の風が吹き抜け女性特有の甘い匂いが鼻腔を擽り思わず声に出てしまう。
匂いフェチと言うわけでもないが
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