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東方虚空伝
第三章   [ 花 鳥 風 月 ]
四十話 次の舞台へ
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掛かるが萃香はそんな反応が可笑しくて大笑いしていた。

「萃香の言う通りだね、全くそんな事言われた位で取り乱して情けないったらありゃしない」

 突然二人の頭上からそんな声がかかる。萃香が見上げると王儀が持ち上げていた巨岩の上から一人の鬼の女性が顔を覗かせている。

「いやいや姉ちゃんあんな事言われたらしょうがねーじゃん!俺は悪くねーぞ!」

 女性は巨岩の上から飛び降り二人の前に立つ。赤い瞳で金色のロングヘアー、額からは王儀と同じ赤い角があり彼女の角には黄色の星印が付いている。胸元から肩口まで肌蹴(はだけ)させた紫色の振袖を纏い紫色のロングスカートを穿いている。
 王儀の姉、「星熊 勇儀(ほしぐま ゆうぎ)」は萃香に視線を向け話しかける。

「こいつの事はいいとして百鬼丸に何を命令されたんだい?」

 勇儀の発現に王儀が文句を捲くし立てるが二人は無視し話を続ける。

「七枷虚空って奴の情報を集めてこい、てさ。いいように使ってくれるよ」

「しょうが無いじゃないか、今はあいつが此処の頭領、あたしやあんたがあいつを倒せない以上あいつが此処の掟だ。分かってるだろう?」

 言われなくても分かっている、萃香はそう目で勇儀に伝える。
 数十年前に百鬼丸は突然現れ当時の頭領と一騎打ちで勝利し此処の頭領になった。頭領と一騎打ちで勝利すればそれが新たな頭領、それが此処の掟の一つ。気に入らない相手だとしても掟には逆らえない、本当に嫌なら一族を捨て独りで生きる道もあるが萃香にはこの一族を捨てる訳にはいかない理由があった。
 この一族は前頭領である萃香の父親が無法者であった鬼達を纏め上げたものだからだ。此処にいる鬼達は勇儀達を始め全てが前頭領に恩義を持っており彼が定めた掟を遵守している。鬼は?を嫌い恩義を貫く者、それがたとえ他者から見て愚かしくとも愚直に生きる不器用な妖怪なのだ。もっとも百鬼丸がそんな鬼に当てはまるかは分からないが。

「……じゃぁあたしは行くよ、帰りが何時になるかはわからないけど」

「あんたの能力なら何時でも帰ってこれるだろう、心配無いとは思うけど気をつけてな」

 萃香は軽く手を振ると霧となって四散した。そして萃香を見送った勇儀は王儀に向き直り、

「さーて王儀、百鬼丸を倒したいんだろう?だったらこれからあたしが組み手の相手になってやるよ」

 勇儀は指を鳴らしながらゆっくりと王儀に近付いていく。

「えっ?ちょ、ちょっと姉ちゃん!ほら俺まだ岩を持ったままだし!今日は調子が良くないって言うか!えっ!えっ!何で構えに入ってるの!何で拳を振りかぶってるの!何で目が本気なの!待って待って待って待っ!」

 空間に王儀の悲鳴が盛大に響き渡るのであった。
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