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東方虚空伝
第三章   [ 花 鳥 風 月 ]
四十話 次の舞台へ
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まると其処に小柄な鬼の少女が立っていた。少女の名は「伊吹 萃香(いぶき すいか)」、真紅の瞳を持ち、足元まである薄茶色の髪を先端で結び後頭部には大きな赤いリボンが結ばれておりこめかみの後ろの方から左右対称に三十cm程の捩れた角が生えている。
 ノースリーブの白い服、紫色のロングスカート、両手首にはめている腕輪からは数十cmの鎖が伸びその右の先端には拳大程の三角錐、左には同じ位の球体が付いている。
 鬼の少女は億劫そうに百鬼丸へ視線を向けると気だるげに口を開く。

「……何の用?」

「お前ちょっと七枷虚空の身辺を探ってあの野郎の弱みでもなんでもいいから掴んで来い!」

「ケヒ!ケヒヒヒ!逆恨ミ!逆恨ミ!元々自分ノセイナノニ!ケヒヒヒヒヒ!」

「……何であたしがそんな事しないといけないのさ?」

「ああん!テメー頭領の命令に逆らうってのか?」

 百鬼丸と虚空の間に何があったかは萃香は知らないし興味も無い。だが百鬼丸がここの頭領である以上命令には逆らえない。それが一族の掟だからだ。
 萃香は百鬼丸に何も言わず再び霧状になってその場から消えた。萃香の態度に百鬼丸は舌打ちをした後部屋を後にする。




□   ■   □   ■   □   ■   □   ■   □   ■




 石作りの広大な空間に霧が集まり萃香が現れる。彼女は『(みつ)()を操る程度の能力』を使いあらゆるものの密度を自在に操れる。故に自身を霧状し移動する事が出来、気配を散らす事で全く気付かれずに移動する事もできる。その能力故に今回の任務を言い渡されたのだ。
 その萃香の表情は不機嫌そのものであり並大抵の者は逃げ出してしまうだろう。しかしそんな彼女に声をかける剛の者がいた。

「どうしたんすか萃香さん、そんな不機嫌そうな顔して?」

 萃香が声がした方を向くと一人の鬼の青年が十m程の巨岩を両手で持ち上げ屈伸運動をしていた。緑の瞳で逆立った金髪が箒の様にも見える。額からは二十cm位の赤色の角が一本生え、赤く袖の無い着流しに緑の袴を穿いている。

王儀(おうぎ)か…ちょっと百鬼丸の奴に面倒を押し付けられてイラついてるんだよ」

 萃香の言葉を聞いて青年、「星熊 王儀(ほしぐま おうぎ)」は爽やかな笑顔をしながら、

「あと少しの辛抱ですって萃香さん!もうすぐ俺があのヤローをぶっ倒して此処の頭領になりますから!」

「……あぁそうだね後三千年位待てばいいかい?」

「ちょっ!非道過ぎっすよね!もうちょっと期待しましょうよ!持ち上げてくださいよ!いや確かにまだまだ姉ちゃんや萃香さんには敵いませんけど!だからって三千年はねーよ!傷つくってーの!」

 先程の爽やかさなどかなぐり捨て王儀は萃香にそう食って
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