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東方虚空伝
第三章   [ 花 鳥 風 月 ]
四十話 次の舞台へ
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襟のローブを纏い深緑のサルエルパンツを穿いた青年がにこやかな笑顔を浮かべ漆黒の瞳を向けている。
 その青年を見た配下の妖怪が青年の気質を感じ取り戦闘態勢を取りながら叫ぶ。

「な、なんだ貴様は!邪神が何の目的で此処に来た!!」

 そう青年は邪神であった。本来邪神は妖怪以上に他者と繋がりを持たない、邪神がどの様に発生するのかは解っていないが一つだけ確かな事は生れ落ちたその瞬間から自分以外の者を敵とする事だ。人も妖怪も神も等しく彼等、邪神の敵もしくは獲物である。
 彼等を突き動かすものは己の中に在る我欲だ。自分の欲望に忠実でありその欲望を満たす為だけに存在し続ける。そしてその欲を満たせば満たすほどに彼等の存在は強固になり最終的に『覚醒体(かくせいたい)』と言う形態になる。青年もまた覚醒体の一人。

「気にすんじゃねーよ俺の客だ。お前はもう下がれ」

 配下の妖怪は百鬼丸の言葉に若干躊躇を見せたがすごすごと部屋を後にした。配下の妖怪が部屋を出たのを確認すると百鬼丸は来訪者へと向き直り口を開く。

「それで何の様だ、臥寫喰(がしゃくら)

 百鬼丸は鋭い眼光で来訪者、臥寫喰を睨みつけるが当の本人は全く意に介さずヘラヘラと笑みを浮かべながら、

「非道いな〜、君と僕の仲じゃないか♪無有〜百鬼丸が苛めるよ〜」

 芝居がかった動作を大げさにしながら臥寫喰は自分の足元へと向けそう言うと彼の影から全身真っ黒の鬼の少女が這い出てきた。

「百鬼丸ハ非道イ鬼!外道!屑!マヌケ!鼻ッタレ!馬鹿!ゴミ!駄目ノ集合体!臥寫喰可ガ哀想!デモ臥寫喰モキモイ!胡散臭イ!ドッチモ仲良ク死ンジャエ!ケヒ!ケヒヒヒヒヒヒ!」

「相変わらず非道い子だな〜まあいいや。ほらほら百鬼丸もそんな顔しないの、笑顔笑顔♪」

 まさに鬼の形相で無有を睨んでいた百鬼丸は圧力を弱める事無く視線を臥寫喰に向ける。

「……それで本当に何しに来たんだテメーは?」

「うん実はねちょっと用事で大陸の方に行くからこれを君に渡しに来たんだよ。次は何時来れるか分からないからね」

 そう言うと臥寫喰は懐から小さな袋を取り出しそれを百鬼丸へと放って寄越した。百鬼丸はそれを掴むと袋の口を開け中から中身を一つ取り出す。それは直径一cmほどの赤い丸薬だった。

「いいかい?くれぐれも使い過ぎが無い様にね。使い過ぎは身体に良くないって合図だから」

「ふん!用が済んだらとっとと失せろ」

「非道いな〜全く。じゃぁ僕は帰るよ、またね〜♪」

 そう言い残し臥寫喰は闇へと消えていった。臥寫喰が消えるのを見てから百鬼丸は中空に向かい声を上げる。

「萃香!ちょっと来い!聞こえてんだろ萃香!」

 暫くすると部屋に薄白い霧が立ち込めそれが急激に一点へと集
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