第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
四十話 次の舞台へ
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
早とちりしてしまい問答無用で襲い掛かってしまったと謝罪してきたのだ。良く見ると彼女自身も傷だらけで手足に巻いている包帯は血が滲み赤く染まっていた。
簡単に事情を聴くと数日前に元々住んでいた集落が敵襲に遭い敗北し何とかこの山にまで逃げてきたのだという。物資も無く碌に治療も出来ぬまま身を潜めていた所に僕が現れた、と言う事らしい。
彼女達に案内された場所には五十人程の満身創痍な天狗達が横になっており見かねた僕は七枷の郷での治療を申し出、花畑に戻り紫に頼んで天狗達をスキマで神社の本堂に移動させた後郷の住人達に協力をお願いした。
神社の本堂に移動させた訳は適度な広さがあって尚且つ僕の責任で管理できる場所が其処しかなかったからだ。事情を説明すると神奈子も了承してくれたので問題は無かったけど。
今、天魔は神社の社務所の一室で栞と百合に治療を受けている。天狗族の長である為天魔だけは別室で治療を受けさせてほしい、と他の天狗達の懇願で別室にしたのだが当の本人は自分だけ別室になったのが後ろめたい様だ。
天魔の手当てが一段落したのを確認すると僕と神奈子は天魔の部屋を訪れ詳しい話を聞く事にした。
「此度は非礼を働いた者にこの様な施をして頂き誠にありがとうございます。一族の長として礼をさせて頂きます」
寝かせられていた布団から上体を起こし僕と神奈子に頭を下げる天魔。
「気にする必要なんて無いよ、こいつの気紛れに一々感謝なんてする事はないんだからね」
「うん、神奈子の言う通り気にする事は無いから。それはそうと詳しい事を聞いてもいいかな?」
「はい、我等の里を襲撃してきたのは妖怪と人、そして神でした」
天魔の言葉に僕達は流石に驚いた。人と妖怪だけならまだ在り得るのだが、そこに神まで関わってくるのは本来在り得ない。大和の神も妖怪を討伐等はするがあくまで敵対する者や人里を襲う者だけだ。天狗や河童の様に基本的に害意を示さない者まで積極的に討ちには出ない。
「何か相手の手掛かりになりそうなものはなかったかい?」
神奈子の問いに天魔は考える仕草をした後で、
「…確か妖怪の数人が『百鬼衆』等と口にしていた様な気がします」
『百鬼衆』その単語を聞いた瞬間、僕の脳裏に一匹の鬼の名前が過ぎる。恐らく神奈子も同じ事を考えたのだろう渋面になっていた。もしかしたら偶然同じ様な名前をした集団なのかも知れないが可能性は低い。
「ねぇ天魔、そいつ等は何で君達を襲って来たか分かる?」
「……はい、奴等の狙いはどうやら我等、天狗の子等だった様です。…私は、私達は目の前で攫われていく子等に救いの手を差し伸べる事が出来ませんでした!何と情け無い事か!」
その時の光景を思い出したのだろう、天魔は両拳を強く握り悔しそうな表情
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ