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東方虚空伝
第三章   [ 花 鳥 風 月 ]
四十話 次の舞台へ
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 七枷神社の本堂の中が喧騒に包まれている。引っ切り無しに町の住人が行き来し慌しい。
 そして本堂の中には沢山の布団が敷かれ五十名程の怪我人が寝かされており治療を受けていた。手当てを受けているのは頭に獣の耳が生えている者と背中に黒い羽根を持つ者、天狗と言われる者達だ。

「包帯の替えが無いよー「お湯沸いてるかい?「傷薬どっかに余ってない?「沁みるけど我慢するんだよ「あれ何処にあるんですかー「包帯の追加ですよー「こっちにおくれー・・・・・

 天狗達の手当てを行っている女性達が忙しなく作業に従事している中、手当てを受けている天狗達は一様に戸惑いの表情を浮かべていた。
 本来天狗は多種族とのふれあい等は行わない、寧ろ多種族を見下している者の方が多いくらいだ。彼らもその事に少なからず自覚がある為嫌な顔せず自分達の手当てをしている者達の行動がうまく理解できないでいるのだった
 そして一人の羽根を持つ天狗、鴉天狗の男が自分の腕に包帯を巻いている恰幅の良い年配の人間の女性に呟く様に問いかける。

「……何故こんな事をする?」

 その呟きに女性は一瞬何の事か分からずキョトン、とした表情で固まるが次の瞬間には快活に笑い手当てを再開しながら男の天狗に言葉を返す。

「何故ってあんた、困った時はお互い様だろ?困っている奴がいる、だったら自分が出来る事をしてみる。怪我をして動けない奴がいる、だったら怪我の手当て位してやる。そんな単純な事じゃないか!」

 女性の言葉にまだ納得が出来ないのか男の天狗は更に疑問を口にする。

「…我等は天狗族でお前達は人間だ、我等を助けて得をする事などあるまい?」

「他の所じゃどうか知らないがこの都、七枷の郷じゃ人間だの妖怪だのって区別はあんまり意味無いんだよ。あたしが物心つく時から種族なんて気にせず助け合ってきてるからね。だからあんたも難しく考える事なんてないのさ!」

 その言葉を聞いた男の天狗は表情を隠すように顔を伏せると呟く様に、

「……すまない…いや違うな……ありがとう…」

 妖怪の中でも上位種に属する天狗族、それ故に誇りと奢りを持ち相手を見下す事を当たり前としていた。そんな彼等にとって七枷の郷の住人の言葉は酷く理解しがたく、そして何故か心地良いものだった。
 故に男の天狗は生まれて初めて多種族に対し感謝の言葉を口にする。彼のこの行動が天狗族の変化の最初の一歩だったのかもしれない。




□   ■   □   ■   □   ■   □   ■   □   ■




 山中で襲撃してきた天狗達に手を挙げ降参の意志を見せた時に現れた女の鴉天狗は天狗族の長で「天音 天魔(あまおと てんま)」と名乗った。
 そして僕が此処に来た理由を説明すると僕の事を追っ手だと
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