第一部
死と共にはじまるものは、生である
人間は自分の知っていることなら半分は信じる
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◇
一度茶屋から出て船着き場で乗船チケットを購入しておく
何事も下準備が大切なのだ
まだ3時間ほど時間に余裕があるので、茶屋で食事でもとろうと思い、元来た道を歩き出す
歩いているうちに無性に気分が悪くなり、口内に血がせり上がってくる
いつもの吐血とは違う感覚に焦り、慌てて茶屋でトイレを借りる
トイレを借りて30分はたっただろうか
店員が心配そうに外から声をかけてきている
それを無視して、喉を押さえ吐き続ける
備え付きの小さな鏡が、青白い顔を、この短時間の内にやけにこけた頬を映し出す
喉から手を離し、紙を乱暴に手繰り寄せ口を覆う
不意に映った喉元に、褐色の絞め跡を幻視した
すこし治まっていた吐き気がぶり返した
心の内に灯るのは恐怖か恨みか
ただの弱者でしかない自分に対する恨みか
気絶しないよう足をつねって痛みを与える
冷たい壁に身を預け、座りこむ
血の匂いと胃液の酸い臭いが立ち込めている
茶屋の者にいくら包めばいいだろうかと現実逃避気味に考え、息を整える
しばらくして、外から騒がしい音が聞こえてきた
店員が医者でも連れて来たのかと思ったが、突如壁に伝わる衝撃に飛び上がる
似ているようで、似ていない
どこか懐かしくも、真新しいチャクラ
これを俺は知っている
熱を持ち始めた頭が警鐘を響かせる
思わず腹部を押さえ、壊された扉を眺めた
金髪の女、長い髪を一つにまとめたくのいちらしき人物
原作に出ていた彼女を、俺は覚えていた
(・・・二位、ユギト・・・)
同じ、人柱力
なるほど、懐かしいと感じたのは尾獣のチャクラのせいだったのか
俺の存在を確認し、吐き続けた血のあとを見るや否や血相を変えたユギトは、ポーチから増血丸を取り出し、そのまま俺の口に含ませた
吐き続けたせいで口内の感覚があやふやになっていたが、なんとか噛み砕き飲み込んだ
「君、大丈夫かい?常備薬はある?」
優しく、幼子に問いかけるようだった
震える手で腰につけたポーチをあける
俺が探るより早くユギトが中を確認し、何種類かの薬を取り出す
小ビンに入った錠剤を指し、指で数を示す
途中噎せこんで血を撒き散らしてしまう
店員が水の入ったグラスをユギトに手渡し、彼女は錠剤と水を口に含み、そのまま俺に口移しで流し込んだ
(・・・この体のファースト、キス・・・だな・・・)
そんなことを考えられる余裕が出てきた
薬を飲んだ安心感からか、眠気が襲う
このまま寝てしまってはいけない、気を紛らわすようにユギトの手を握った
「・・木の葉の、里に・・・港の船・・・」
乗船チケットを取り出しユギトに見せる
このまま倒れて、乗り損ねてはいけない
言いたいことが伝わったらしく、チケッ
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