暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
11:素顔を暴けば、こんなにも
[8/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


「…………ユミル、お前は本当に可哀想なヤツだな。……小さく、弱くて、女々しい。……なぁ、ユミル、俺にはお前が――」

 その時だった。

「――いま……て…った」

 俺の言葉は、ユミルの小さく低い声の呟きによって遮られた。

「え?」

 よく見れば、抱きかかえられた麻のボロズボンの握り締められた膝の部分の皺が大きく広がり、わなわなと肩が震えている。
 そして……


「――今、なんて言ったッ!?」


「うわっ!?」

 急に立ち上がったかと思えば、ずんずんと俺に詰め寄り胸倉をぐわしと掴まれ、鼻と鼻を突き合わせるように、背伸びして顔を押し付けられた。
 文字通り眼前に迫るその可憐な顔は怒りに歪み、エメラルドの目には憤怒の炎が轟々(ごうごう)と燃え盛っている。

「黒の剣士ッ!! さっき、ボクになんて言ったんだよ!?」

「あ、あー……えっと……」

「どうなのっ!? 答えてよっ!!」

 肩だけでなく、桜色の唇すらも怒りに細かく震えている。余程ご立腹のご様子だ。
 そんなユミルを見て俺は半ば呆気にとられつつも、脳裏ではこう思っていた。

 ……こいつはラッキーだ、と。

 つい、心の中で千載一遇を確信した指パッチンを決める。
 (よど)んだ関係を構築してしまったユミルと俺達だったが、ではもういっその事……彼女をひたすら挑発して、今の関係を垣根からぶち壊した方が得策だと俺は考えていたのだ。
 アスナ達曰く、彼女が見た目通りの疑心暗鬼に捕らわれた不信症者ではないとしたら、この際コミュニケーションがとりづらい今の関係よりも、まだ敵対関係にあるほうが、彼女の事を知るには格段に良い関係だ。互いに疑い疑われ、気まずい雰囲気での現状維持を続けるよりも、睨み合い、時には小突き合っていれば、彼女の素性も(おの)ずと見えてくるだろうと踏んでいたのだ。
 だがまさか……今の発言のどの単語が逆鱗に触れたかは分からないが、よもやこんな展開でユミルの気が引けるとは思わなかった。
 ニヤニヤと口の端が釣り上がりそうになるのを、今は必死に抑える。

「……ああ、確かに言った。お前は実に可哀想だ」

「そんなことはどうでもいい!! その続き!!」

 すぐそこにある彼女の口から発せられる怒声が、吐息ごと俺に叩きつけられる。仄かな柑橘系の芳香まで香ってきており、心にまだ余裕のある俺は鼓動が高鳴りかける。

「可哀想なのはまだ、まだよかったにしてもっ……あまつさえボクが弱いという発言に加えて、ちっ、小さくてっ……め、めっ……女々しいだって!? キッ、キミ達はマーブルの客でもあるから、我慢してたけどっ……もう許せないッ!!」

 ユミルは見る見るうちに顔を真っ赤に茹で上がらせ、俺を
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ