11:素顔を暴けば、こんなにも
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かけた。
「……どうしてマーブルさんの料理を食べないんだ? やっぱりそれすらも信じられなくて……もしかしたら、自分を貶める毒が仕込まれているかもしれない……とでも疑っているのか?」
問うたその瞬間、ユミルの気に障ったとばかりにギロリと睨まれる。
ジト目の時も少しばかり感じていたのだが、こうして直に睨まれると、本来の可愛らしい目の形から一気に鋭くさせられるギャップが大きい為か、ひどく不似合いに感じられる。それが何故か、俺の胸の奥で微かに悲しい余韻を残した。
「……別に、マーブルの場合は毒が入ってるとかは思わない。それ以外の人のは……その通りだけど」
「じゃあ、何故マーブルさんだけ別なんだ? ……ある意味では、彼女だけは……信用してるのか?」
「違うよ」
少し期待をして問いかけたが、間髪入れない即答が帰ってきた。
そしてまるで愚か者を見るかのように、目の鋭さと威圧感が消えた代わりに、冷ややかに細められた視線が俺へと注がれる。
「マーブルにはもう、これ以上借りを作りたくないだけ」
「借り……宿にはいつも泊まっているのに、か?」
「マーブルはボクの事を常連だなんて呼んでたけど、別に毎日泊まってる訳じゃない。普段は一人で野宿してる。ここへ来るのはせいぜい三日に一度程度だよ。……もっと間隔を空けたいんだけど、一度何日も行かなかったら、村からかなり離れた森の中だったのに、遥々ボクを探しにきたときは驚いたかな……。だから、少しくらいは顔を出してる。まったく……正直、迷惑だよ」
「…………お前……マーブルさんがそこまでしてくれて、本当に迷惑だと思ってるのか」
ユミルの心無い言葉に、俺は湧き上がってきた苛立ちと憐れみを抑えきれず、言葉に僅かにそれらの感情を含ませてしまった。
するとユミルは、俺の顔をジロリと目を細めて覗き込んだ後、酷く不愉快そうに目尻をピクピクと引き攣らせた。
「……さっきの二人といい……なんでキミ達は揃いも揃ってボクをそんな目で……! そんな憐れむ様な目で、ボクを見ないでよ……!!」
それからすぐに目をサッと逸らされ、視線が炎へと逃げさせられる。その髪が一瞬宙を舞い、サラサラと戻っていく。
「なぜだ? お前は、誰がどう見ても、こんなにも憐れだ。心に血の通った奴なら、誰が見たってお前をそう思うだろうぜ」
「違う……! ボクはそんな奴じゃない……ボクはもう、誰とも接したくないだけなんだ! 同情も、哀憫も、憐られもされたくない人間なんだ! だから、もう……ボクを放っておいてよ……!!」
ガリリッ、と口に含んでいた果実を一気に噛み砕く音が聞こえた。その口元はもう何度も垣間見た犬歯が覗き、食いしばられている
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