暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
11:素顔を暴けば、こんなにも
[6/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
っとりと目を見事なジト目にさせ、鼻の溜息と共に、実に怪しむ視線で俺を見上げた。
 ……シチュエーションさえ違えば、それも陰鬱そうながらも可愛らしくある仕草なのだが……今はそういう場合ではない。
 と……

「うおっ?」

 ユミルが小袋から新しくつまみ出した謎の小粒を指で弾いて、こちらに放ってきた。俺は慌てて両手で受け止める。
 見てみればそれは、何のことはない木の実だった。ただ、見たことのある種類ではなかった。枝豆の実に似た大きさと形状で、表面も滑らかだが……色は明るい黄色だ。香りも微かな柑橘(かんきつ)系のようだが……まるで味の想像が付かない。

「コレ、くれるのか?」

 鼻を鳴らして、目を逸らされた。
 ……まぁ、つまりはそういうことなのだろう。
 俺は木の実の表面を軽く指先で触れ、ウィンドウを表示させてみる。
 システムの解説によると、これは《ココリの実》という名の木の実で、この階層全域でのみ採れる特産品のようだ。味の表記はされていない。物は試しにと早速口に放り込み、噛み砕いてみる。
 予想通り、果肉というよりも、ナッツやキャンディに近いカリッとした硬い歯応えがあるが、噛んだ途端に果汁が(ほとばし)る実に瑞々(みずみず)しい食感で――

「――くぉっ!?」

 次の瞬間、尋常ではない刺激が俺の舌を襲った。
 ……なんと言えば良いのだろう。
 酸い。
 とにかく酸っぱい。
 例えるなら、レモンとグレープフルーツの果汁を混ぜて、限界まで濃縮させたかのような……強烈な酸味が果肉と果汁から、これでもかとダイレクトに味覚を舌に伝えていた。おまけに噛み砕く前とは比較にならない酸っぱ過ぎる香りが俺の鼻腔を駆け抜け、ツーンと思わず視界が涙で薄くにじむ。
 だが……刺激に慣れてくると、この独特な食感も相まって、実にフルーティな果実だ。確かにクセになる人もいるかもしれない。
 気付けば、俺のリアクションを予想していたのか、ユミルにフフンと軽く鼻で笑われた。
 …………だが落ち着け、桐ヶ谷和人。俺はここで怒るようなガキではない。

「……美味しかったよ、ありがとう。ユミル」

 この風味にも負けない位に爽やかに笑って見せるも、語尾が僅かにブレたのは強い酸味で喉が引き()ったせいだ。ああ、間違いない。

「……それで? どうせキミも、何か下らない事でも言いに来たんでしょ、《黒の剣士》?」

「……その二つ名で呼ばれるのは好きじゃないんだ。名前のほうで呼んでくれると嬉しいな」

 キリトだ、と改めて名を伝え手を差し出したが、ユミルはそれに一顧だにせず、怪しむ目でひたすらに「用件はなに?」と問いかけていた。

「本当に無愛想だな……分かったよ」

 俺は溜息と同時に手を引っ込め、問い
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ