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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
七月二十日:『千里の道も一歩から』
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い出したのか――凄く嫌そうな顔をした後、有耶無耶にするように笑った。

――ほ〜、こりゃあビンゴかな。

「そうかそうか、なるほどなるほど」
「……対馬さん。何ですか、その腹立つ笑顔?」

 なので、少しさっきの意趣返しと洒落こむ事にした。

「いやぁ、妙齢の女子が夜も眠れなくなるなんて……やっぱり御坂もお年頃だな。心配してたんだぜ、もしかして白井ちゃんと同じ趣味なんじゃないかと」

 亜麻色の髪を軽く掻きながら、捕らえた獲物を溶かす食虫植物の溶解液のように濃密な蜂蜜色の瞳で美琴を見遣る。
 嚆矢が発したその言葉は、美琴の鼓膜を揺らし、その脳裏に……ある人物の姿を想起させた。

「なっ――バカ言ってんじゃないですよ! 昨日はちょっと、あの天災(バカ)野郎のせいで一晩中……」

 と、そこで彼女は、院内で大声を出すというマナー違反に気付いて言葉を切る。因みに、最悪の部位での尻切れ蜻蛉だ。

「あ〜、そっちの意味で寝不足だったのか!」

 等と、嚆矢が悪ノリした程に。

「…………っ」

 後に、近くにいた患者は語る。『ブチッて音が、リアルに聞こえましたよ。ええ、比喩でもなんでもなく。ええ、一撃でしたよ。あれはもう、電気ショックとかそんなレベルじゃあなかったんじゃないかな……治療とかしても、もう無駄なくらいに黒こげでしたよ』と。
 超能力者をおちょくるのは命懸けだと再認識した、蝉の煩い夏休み初日の午前だった。


………………
…………
……


 美琴の前に黒子が戻って来たのと、その女性が現れたのはほぼ同時だった。

木山 春生(きやま はるみ)だ、大脳生理学を研究している」

 ワイシャツにタイトスカート、白衣といういかにもな服装の、目の下の隈が酷い女性は気怠げに自己紹介した。
 要するに、今回の件での診察に当たっている学者だ。

 黒子と美琴が答えると、春生は少し驚いた顔をした。学園都市にたった七人しかいない超能力者(レベル5)の名は、案外に売れている為だ。

「あの第三位、『超電磁砲(レールガン)』と会えるとは光栄だ。ところで……」

 と、蒸し暑い室内に薄く汗をかいた春生が廊下の隅っこを眺めて。

「あそこに転がっている消し炭はなんなんだ?」
「ああ、ただの暗黒物質(ダークマター)ですから気にしないでください」
第二位(ホンモノ)に謝れ御坂……ケホッ、風紀委員の、その第三位のMAX二億ボルト放電(ヴァーリ)に耐えきった対馬嚆矢です」

 黒焦げで転がっていた嚆矢がフラフラと立ち上がって自己紹介するも、『そうか』の一言で終わる。美琴とは違い、掃いて捨てるくらい異能力者風情で名が売れている者などは居ない。
 ある意味、今回の事件で『介旅初
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