第十一章 追憶の二重奏
第八話 ベルセルク
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両手にある干将・莫耶を握り直す。
腰を僅かに落とし、足を引き、最大の警戒を周囲に巡らした。何か変化があれば即座に対応出来るように。欠片の兆候も見逃さないと全神経を集中させた。
―――だが。
次の瞬間起きた出来事は士郎の想像を超えていた。
『―――起きなさい“ベルセルク”』
悪意に満ちた笑顔を浮かべている姿が容易に想像できる声で呼ばれた存在は、
―――■■aaaa■aaaaaaaaa■aaaa―aaa■aaaaaaaaaaaaaaッッ!!!
狂乱の雄叫びを持って答えた。
「「―――ッッ!!?」」
士郎はこの世界に来て初めて感じた凶気の叫びにゾクリと背筋を粟立たせた。
耳を、否、全身を震わせ響かせる叫びを形作るのは、元の世界、その闇で嫌というほど耳にした狂気、憎悪、憤怒―――負の感情を煮詰めて生まれたような叫び。
久しく聞いていなかった―――闇の悲鳴。
聞くだけで気が狂いそうになるその声は、それだけで一つの呪いである。
聞こえてきたのは森の奥。
しかし―――、
「―――来るッ」
「ち―――ぃッ!」
雄叫びと共に天高く舞った木々は、瞬く間にこちらに近づき、士郎とセイバーの身体がヨルムンガンドから迫り来るモノに向けられ―――。
「■aa■aaaaaaaaaaaaaaaaッaaaaaaaッ!!」
「―――ぐぅ?!」
飛び込んで来たソレは、士郎に襲いかかった。
ソレは地面すれすれを滑るように飛びながら士郎を、右手に持った細身の杖で刺し貫こうとする。士郎は十字に重ねた干将・莫耶でそれを受け止める事に成功するが、その場でまともに耐える事も出来ずに人形のように吹き飛ばされてしまう。
「く―――そッ!?」
悪態を付きながらも空中で体勢を整え無事に着地する士郎。森から現れたソレの力は凄まじく、士郎の身体は遥か後方にいたルイズたちの前にまで吹き飛ばされてしまっていた。
「「「「シロウっ!?」」」」
ロングビルとキュルケが吹き飛ばされてきた士郎に驚愕の声を上げる。同じく子供たちを守るようにして立つティファニアと、その彼女の護衛のように傍に控えていたタバサも悲鳴にも似た声で士郎の名前を呼ぶ。
だが、そんな中ただ一人ルイズだけは、士郎の名を呼ぶことなく呆然とした顔で士郎を襲ったソレを見つめていた。
士郎はロングビルたちに軽く手を振って無事を伝えると、改めて自分を吹き飛ばした相手に顔を向けた。
ソレは獲物に襲いかかる直前の肉食獣のように前傾姿勢の格好で荒いだ息を行い、口元からは大量の涎を垂らし。元は立派なものであっただろう、今では見る影もな
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