第十一章 追憶の二重奏
第八話 ベルセルク
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筋縄でいくような相手ではないようです」
倒れた巨人を前に、油断なく構える士郎とセイバー。それは勘等ではなかった。二人の目は、倒れる巨人が損傷を受けていなかったことを捉えていた。先程士郎が投擲したのは宝具ではないが、魔力を帯びた剣であり。剣が巨人に当たった瞬間、士郎は壊れた幻想を行ったのだが、結果はどうやら大したダメージを与えられなかったようである。結構な威力の爆発ではあり、巨人をこれで殺れるとは思ってはいなかったが、身に纏う鎧ぐらいはと考えてはいたのだが……。
「ただの鎧ではないということか」
士郎たちの予想通り、何事もなく起き上がろうとする巨人を警戒しながら、士郎は小さく呟く。視線は巨人が身に纏う鎧。先程の爆発の一瞬に感じた感覚。何処かで覚えがあるそれを確かめるかのように、士郎の目が鋭く鎧をなぞる。
巨人が完全に立ち上がるのを見ながらも、士郎の意識は同時に背中にも向けられていた。背後では未だパニックが収まらない子供達の悲鳴が上がっている。ここから避難するにはまだ時間がかかるだろう。士郎は両手に投影した干将・莫耶を握り締めると、立ち上がった巨人に声を向ける。
「久しぶりだなミョズニトニルン。今回はまた随分と大きな奴を連れてきたな」
巨人に話しかける士郎。傍から見れば恐怖で頭が可笑しくなっているように見える光景ではあったが、返事はあっさりと返って来た。
『そうね。久しぶりねガンダールヴ。今日はそこにいる我々の姫君を攫った事に対する賠償を請求しようとやってきたのよ』
声は巨人の頭の近くから聞こえてきた。セイバーは巨人の頭を仰ぎ見るが、そこに人影のようなものの姿は見えない。何か声を発する魔道具か何かが設置されているのだろうと、士郎は考える。魔道具を使用するミョズニトニルンがここにいないだろうと言うことはほぼ百パーセントだなと考えながらも、もしもの時を考え辺りの森を気付かれないように確かめる。
「ほう。それではそこのデカ物が取り立て屋だと言うことか」
『そう言うこと。でもデカ物は酷いわね。この子にはちゃんと『ヨルムンガンド』という立派な名前があるのよ』
「ふむ……『ヨルムンガンド』、か……それはまた、何とも凄い名前だな」
脳裏に北欧神話に現れる巨大な蛇の姿が浮かんだのを放り捨てると、士郎は大げさな仕草で肩を竦めた。
「で、その賠償とやらはなんだ? あいにくと今は持ち合わせがなくてな。トリステインまで来てくれればある程度はあるんだが?」
『ふふふ、その心配はないわね。欲しいのはお金じゃないから』
「……ほう。それでは何かな?」
『じっとしていれば直ぐに終わるわ……苦しみたくないならそこで目を瞑って跪きなさいッ!!』
巨人―――ヨルムンガンドが腰に差
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