第十一章 追憶の二重奏
第八話 ベルセルク
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な気になって……。
だから、それはただの偶然。
外へと繋がる扉を開けた時、あの人を見つけたのは……。
雲一つなく晴れ渡った空に浮かぶ二つの月から振り注ぐ光を、まるで舞台上で照らされる主役のように照らされ立つ彼女。
解かれた金の髪は緩やかに流れる風に乗り、金粉を撒き散らすかのように輝きを纏って踊り。
ほっそりとした身体を包む薄い白いガウンは、真白に輝き淡く夜の闇に浮かび上がる。
目を伏せ天上を仰ぎ見る白い顔ばせは、まるで神聖な巫女が神に祈るかのようで……。
ただ―――ただ、素直に綺麗だなと……感じた。
だから……こんな、今にも消えてしまいそうな月の光で出来たかのような彼女が、夢の中で見たあの人と同一人物だと思えなくて……思わず……声をかけてしまった。
「―――ねぇ、アルト」
彼女に―――夢で見るあの人に―――シロウがセイバーと呼ぶ少女に……。
太陽が中天に座す頃、振り注ぐ光を背に歩く一団の姿があった。道とは言いづらいデコボコと荒れた地面の上、十歳前後の子供を真ん中に置いて進んでいる。もう既にかなりの距離を歩いてはいたが、子供たちはこれから向かう先に対する好奇心からか、それとも集団で行動することに対する興奮からか、未だ騒がしいまでにはしゃいでいた。そんな子供たちの手綱を握るのは、子供たちの集団の中、一番年下の子供の手を両手に握り歩くティファニアであった。耳を隠すための大きな帽子を被ったティファニアの周りには、子供たちの中でもひときわ幼い者たちが固まっている。子供たちはティファニアの着るローブの端を握りキョロキョロと辺りを見回しては、何か興味が惹かれるものを見つけては不意に立ち止まっては歩いていた。そんな風にティファニアは、時折引っ張られるローブにつっかえながらも、その度に周りの子供たちの様子を伺っては安心させるように笑って引率を続けている。
その様子を先程から何度も肩越しにチラチラと振り返っては見ている者がいた。先頭を歩くロングビルである。顎に手を当てると隣でだいぶ息が上がり始めたキュルケに視線を向けた。
「ねぇ、何かあの子変わった気がしないかい?」
「っは、ふぅ、え? 何か言った?」
「ティファニアさ。今朝から随分と……そう、スッキリしているような」
「スッキリ?」
額に浮いた汗を拭い、知らず曲がり始めていた腰を伸ばしながら後ろをチラリと見たキュルケが顔を前に戻すと、疲労が浮かび始めた顔に納得の色を浮かべた。
「そうね。確かにスッキリした顔をしてるわね。まあ、トリステインに行くって決めたからじゃない?」
「そうかい? わたしは違うと思うんだけど」
「なら何だって言うのよ?」
「―――こう
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