第二話
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思い出せば抜かれた後に夏音を追い掛けるようなことをこれまでしていなかった。
「なっ!?」
夏音のシュートコースは完全に塞がれていた。なのに聞こえたのは相手の声。これまで何度夏音に抜かれても余裕の態度で接していた人から初めて戸惑いの声を聞いた。振るわれた腕は空振りし、直後夏音の“右手“で高く放り投げられたボールはバックボードで跳ね返りゴールに向かって落下。リングに当たったものの、跳ねることなくネットを潜り抜けて地面に落ちた。
「凄いな……。いつの間にか覚えたの、あんな技。水無月ちゃんの歳でダブルクラッチなんて出来る子、そうそういないでしょう?」
「……ま、前にパソコンで見まして……!」
そこで二人とも休憩する気になったのか、相手の渡したタオルで汗を拭きながら夏音が歩いてくる。
ただ、それを見ても声を掛けようとは思えなかった。バスケに限らず、運動全般が得意な夏音を、同じクラスの奴らは凄いだのなんだの褒める。だが、いつも夏音に連れ回される俺はその方面で常に比較されて一部の男子から馬鹿にされていた。「女に運動で負けるなんて」とかそんな感じだ。でも、そいつらも夏音が毎週欠かさず大人相手にこんな練習をしているのを知らない。しかもまともな勝負になってるなんて信じないだろう。
でも、だからって━━━━。
「それっ」
「ひゃい!?」
「あっははははははは! ひゃい! ひゃいって! あははははははは!」
「夏音!!」
首にいきなり感じた冷気に思わず声を上げながら振り返ると、両手にペットボトルを持った夏音が居た。
「奢ってもらった。ほらこれ」
「普通に渡せ……」
ペットボトルを受け取ると、さも当たり前みたいに隣に座ってきた。いや、別に俺のベンチじゃないしいいんだけど。
「なあ?」
「ん?」
「なんでこんな練習してんだ?」
「なんで…って、センターだってドリブルぐらい━━━━」
「そうじゃなくて! 練習するならミニバスのクラブだってあったし、学校にもバスケ部あったろ!」
夏音が突然バスケクラブに殴り込んだ(そうとしか言えない姿だった)のが一年くらい前。クラブの人達も最初こそ戸惑ったりしてたが、今では好意的に受け入れられている。だが、そこまでするぐらいなら普通にミニバスとか入ればいいのではないだろうか?
「こっちの方が色々教えてくれそうだからな。実際勉強になることも多い」
「そこまでして一体何がしたいんだよ」
「何……って……」
「友達も居ない癖に。母さんだって言ってたぞ。いじめられてるんじゃないかとか」
他の奴らが遊ぶ間もこいつは暇な時間があ
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