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乱世の確率事象改変
〜幕裏〜 彼の間違い
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 真白に塗りつぶされたこの世界に来たのは四度目であった。彼は絶望の海に堕ち、そのままこの世界に辿り着いた。不思議な事に、いつもなら無いはずの彼の身体はその世界にあった。
 絶望が支配する心をそのままに、白の世界の中心で無機質な瞳で自分を見やる少女と相対していた。

「……やっぱり弾き出されましたか、第三適性者徐晃。あ、肉体があるわけじゃないですよ。ただその方がお前も聞きやすいかと思いまして見せかけの実体化をしてるだけです」

 耳に響く少女特有の甘い声音は彼に届いていた。しかし反応を返す事は無く、ただ茫然と、自分の心にある絶望を見つめていた。
 自分に興味を示さない彼に対して、少女は気にする素振りも見せず、ただ淡々と事務的に言葉を続けて行く。

「詳しくこちらの事情を話すと厄介な事になりますから言えませんが……世界改変は順調、とだけ言っておきましょう。これからも頑張ってくださいね」

 ピクリと彼の身体が跳ねる。それを見た彼女はにやりと意地の悪い笑みを浮かべて、一歩、二歩と彼に近付いて行く。
 肉薄して数瞬、トンとその大きな体躯の胸を人差し指で圧した。

「ここが痛いですか? ふふ、当たり前ですよね。だってお前のしてきた事が全て無駄になったんですから」

 彼はゆっくりと顔を上げて、その少女を睨みつける。憎悪と悲哀と決意を込めて。

「無駄? 何が無駄だ? あいつらの想いを無駄になんざさせるかよ。俺が一人で背負えばいい。桃香を……劉備を従えて偽りの大徳を演じてやればいいだけだろう? 雛里なら曹操軍に俺を入れているだろうから、官渡が終わったらアレをすればいい。どこぞの軍神様のように千里を行けばいいんだ。そうすればまだ繋いでいける。桃香も愛紗も鈴々も朱里も白蓮も星も……一人ずつ取り込んで行けばいいんだから」

 そのまま、彼は突然からからと笑いだした。愚かな道化である己への自嘲だけを込めて。

「あはっ、あはは! あはははは! 俺が世界を変える事を諦めなければあいつらの暮らす世界は壊れないんだろう? ならやってやる、遣り切ってやる。仲間も友も、雛里でさえも利用して、必要なら切り捨ててやるさ! この前みたいに送り直せよ、俺が劉備の代わりをしてやるから。あの時代に死んじまう天才達を出来る限り生き残らせて、壊れない平穏を作り出してやるから」

 楽しそうに、壊れたように言い放つ。彼の心はもう壊れ始めていた。愛しい少女をこれからも巻き込み続けるとしても、先の世で多くの人が平穏に暮らせるなら大嘘つきになってやろうと……自分を殺し始めた。
 少女はそんな秋斗の様子に盛大なため息を吐いた。茶髪と平坦な胸で行われる仕草が自分で切り捨てた誰かと被って見えて、秋斗は不快げに顔を歪めた。

「改変は順調なんだろ? だったら早く送り直
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