〜幕裏〜 彼の間違い
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はなりませんでした。このイレギュラーだらけの、何故か鳳統の元に落ちた今回の事象でそれが為せたなら、『確率事象の向こう側』に辿り着ける可能性が高いです」
ふいに少女は空間から二つのモノを取り出す。それは七色に輝く鳥の骨と幾重にも巻かれた琵琶の弦であった。
二つを彼の身体の上に置くと、二つと一人は煙のように消え去った。
大きく安堵の息をついて彼女は宙を見上げる。
「これでもう、観測者である私はそちら側に一切干渉できません。
第二適性者に使っていた『私の首』と『貴人ちゃんの糸』があったので、どうにか世界側の介入で弾きだされた魂を上手く繋ぎ直せました。精神に莫大な負荷をかけて追い詰めましたから人間の防衛本能が働いて、今回あの世界に落ちた時からのエピソード記憶が無くなっているでしょうけど……意味記憶と手続き記憶は無事です。
まあ、本来の自分の記憶を取り戻せるとしたら二回の内どちらか、それとも両方でしょう。
どうか、正しい選択をしてください。外史の内側からはお前が、外側からは私が変えなければだめなんですよ。虚数外史を守る為に……私の存在全てを賭けて変えるんですから。外史世界の未来は外史世界で精一杯生きる人の為にあるべきなんです。
収束点までの課題は後一つ」
独り言を終えた彼女はプツリとモニターの電源を入れた。
そこには部屋から走り去る少女と、寝台の上でその様子を見て不思議そうに首を傾げる男が映っていた。
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