〜幕裏〜 彼の間違い
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」
口ぐちに呆れながら……しかし目には敵意と嫌悪を浮かべて、彼を追い詰めて行った。
頭を抱えて、彼はその場に蹲った。祈るように、懺悔するように、自分が死なせてきた者達へと頭を垂れた。
一斉に槍を突きつけられ、その中心から牡丹と華雄が進み出てきた。
「顔を上げろ徐公明」
「こっちをみなさい、このバカ」
言われるがままに、彼は伏せた顔を上げる。
三日月型に引き裂かれた口は誰のモノであるのか。二人はぽつりと……彼を壊す一言を呟いた。
「うそつきめ」「うそつき」
響き渡る声は誰も聞いた事が無い程に昏かった。
その場で彼は絶叫を上げ続ける。
ジクジクと侵食していく昏い感情は全て己へと向けられ、自責と罪過は彼を殺していく。
幾分か絶叫を聞いていた少女は両の手を身体の前で合わせた。
彼の絶叫はそこで途切れ、そのままバタリと倒れ伏した。
「精神がこれ以上壊れないように思考出来ないようにしときました。
お前は最後の最後まで劉備が変わると信じるでしょうから、一度その思考をぶっ壊さないといけません。劉備の元に居たままじゃ二重雑種になりませんからね」
少女が手を翳すと世界の黒は反転して白に変わった。
倒れたままピクリとも動かない彼に懺悔の視線を向けて……少女は一人、彼に聞こえないから真実を紡ぎ始めた。
「ごめんなさい。もう何度も、幾つもの所に落として乱世の始まりから事象をループさせてますが……この事象が最後なので此処からは間違ってられないんです。
どの勢力に落ちるかはランダムですし、何より私にも少し前まで世界改変の方法が完全には分からなかったので詳しい説明も出来ず思考誘導をするしかなかったんです。
魏に落ちた時は、曹操と平穏を約束して、これから大陸を良くしようと幸せそうに笑い合っていましたね。
呉に落ちた時は、孫策の命を助けて自分が死にました。戦場で命尽きるまで剣を振りながら笑ってました。
蜀に落ちた時も、長坂で夏侯淵と張遼の追撃を防ぐ為に命を捨てました。充足感で満たされて。
公孫賛の元に落ちた時は……まさか乱世を終わらせるとは思いませんでしたよ。
袁家に落ちた時は凄かったです。さすがに外道策使いすぎですけど。
劉表の元に落ちた時は悪逆過ぎて目も当てられませんでした。
これらは何度繰り返しても、無限の可能性がある確率事象で同じような道筋と結末を辿ってました。よしんば乱世を終わらせる事が出来ても、ジョカシステムには干渉出来ませんでした。
ただ……三十三回目の事象、初めて董卓の元に落ちた時が一番世界改変に近付けました。あれ以来、何度董卓の元に落ちても……自分の仕える主が変わる重複ルート……二重雑種事象に
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