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乱世の確率事象改変
〜幕裏〜 彼の間違い
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来る。怯えるように首を左右に振り続ける彼を見て、牡丹は涙を幾多も零し始めた。

「なぁんだ……そんなくだらない事の為に……私は見捨てられたんですか……」

 泣き笑いの顔を向けられて、引き裂かれるような胸の痛みは増していく。彼の心はボロボロと壊れて行く。

「未来を知ってたなら、私と白蓮様を助けられたはずです。あの時秋斗だけでも居てくれたら、私達の平穏は守られたんですよ」

 牡丹の言葉は秋斗の胸を抉っていく。
 何度も白昼夢で見た姿がそこにあった。だから……彼は一番してはいけない事を零してしまう。

「すまない……ごめん……俺はお前達を助けに行けたのに……」

 諦観した相手への懺悔だけは、絶対にしてはいけないこと。自分が救われたいだけの自己中心的な発言であるはずなのに、彼は己が罪過に耐えきれずに零してしまった。

「謝罪なんかいらないんです! 私達はあの時助けて欲しかった! 私は……もう死んでるんです! 白蓮様に会えないんです!」

 泣き叫ぶ声は秋斗の思考を掻き回していく。
 突然、牡丹は秋斗を突き飛ばした。

「お前はっ……白蓮様や星と戦おうとしていますね!? 私が命を賭けて助けた大好きな白蓮様を、お前を想ってくれる友を殺そうとしていますね!? 曹操の元へ行くのはそういう事ですよ!? いえ、劉備の元に戻ってもそうなるんですよ!」

 間違いに気付いたとしても、彼は白蓮と戦わなければならない。牡丹が全てを投げ捨てて命を繋いだ白蓮や星と戦い、殺さなければならない可能性さえあるのだ。
 既に固めていた決意を見抜かれて、秋斗の意思は乱れて行く。
 立ち上がれない秋斗の前に立った牡丹はその頬に手を添えた。

「ねぇ……白蓮様を守ってくれないんですか? 夜天の願いを叶えないんですか? 今までの全てを無駄にしちゃうんですか?」

 牡丹の想いを繋ぐなら、白蓮と戦う事は許されない。
 繋げない想いを提示されて、彼の崩れている心はさらにひび割れて行った。正常な判断も、通常の決断も下せない程に。

「お、俺は……白蓮を……」

 そこに、指を鳴らす音が響き渡った。
 白の世界は黒一色に塗りつぶされて、その場に大勢の人影が現れた。
 それらを視界に映した秋斗の思考は真っ白に染まる。

「……お前ら……」

 緑の鎧、不敵な笑み、漆黒の旗……彼が作り出してきた自分の身体がそこに居た。

「……御大将……あんたは俺らの想いを繋ぐんだろう? 今、なんて言おうとした? 公孫賛様を守るってか?」

 一番隊隊長が告げる。
 逃がすわけが無いというように。妥協は許さないと言うように。

「くっくっ、勘違いで俺らは死地に向かわされたんだってよ」
「無駄死にってぇわけだな」
「信じてたのに……
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