〜幕裏〜 彼の間違い
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瞳で睨みつけた。
「か……華雄……」
「徐晃、貴様はそんなことのために月様の幸せを壊したのか」
怯えのみを瞳に映して見やると、透き通っていながらも昏い声音で責められて、彼の心を容易く抉っていく。
「違う……俺は……」
「何が違う!? 貴様はっ……劉備の事を止められただろうが! 誰の元にも行けたなら、連合を疑っていたのなら、史実と世界の相違点に気付いていたのなら、何故月様を助けなかった!」
それは弾劾と言う名の刃。過去を責める言葉は後悔の切っ先を彼に向けさせ、内部から心を引き裂いていく。
「違う……それは……先の世の為に……」
「貴様はその時の劉備がそれを作るに足りないと知っていながら成長を待っていたのだろう!? 先の世の為と言うなら矛盾せずに曹操の元にでもいれば良かったのだ! だというのにっ……貴様は愚かしくも乱世を引き伸ばした! 月様までもを巻き込んでだ!」
彼は知っていた。乱世を早期に終わらせる為には桃香を華琳に従わせればいいと。そして……それが出来なくとも劉備軍内部で裏切りを行えばいとも容易く蜀の成立を防げる事を。
知っていて乱世を引き伸ばしてきた。桃香が史実の劉備のように天下統一に乗り出すと信じ抜いて。雛里だけでなく月と詠を矛盾の道に巻き込んで。
秋斗は言葉を紡げない。
たった一つの間違いは彼の逃げ道を全て塞いでいる。否、初めからそんなモノなど無かった。
華雄は言葉を紡げない秋斗を……立っている場所に叩き伏せた。
後に、その頭に足を乗せて踏みしめる。
「月様まで貴様の勘違いに巻き込んで……許さんぞ! 泣いて詫びろ! 死んで詫びろ! 絶望の底で壊れて詫びろ! 貴様に誰かを幸せにする権利も、己が幸せを掴む資格も無い! 偽善者徐晃、いや、貴様はただの人殺しだ! 生きる価値も無い最低のクズだ!」
身体的な痛みは感じず、されども心に走る痛みは甚大。彼は何も言えず、華雄の言葉すら耳に入らなくなっていった。
「違う……俺はそんなつもりじゃ……間違ってるなんて……違う……嘘だ……」
ぶつぶつと、自分が壊れないように言葉を紡ぎ続ける彼はもう何も聞かず、何も感じない。
じっと二人の様子を見ていた少女は……もう一度指を鳴らした。彼がもっと追い詰められるようにと。
華雄は煙のように消え、秋斗の頭から重みが消える。
ゆっくりと、別の人物が彼を抱き起した。
自身を支え始めた少女をどうにか認識して、秋斗は更なる絶望に堕ちる。
「秋斗は……そんなくだらない勘違いで私達を助けてくれなかったんですか」
「……牡丹……俺は……」
そこに居たのは白馬の片腕。
涙を溜めて縋るように彼の胸に抱きつきながらも、怨嗟の炎燃ゆる瞳を向けていた。
再び、彼の心に恐怖が
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