〜幕裏〜 彼の間違い
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王になんか! しないでいいんですよ!
ふふふ、言葉の通りお前の思うがまま好きに動いて、乱世を終わらせたらそれで良かったんです! あははっ! お前はどれだけの人をそのくだらない勘違いで巻き込んで殺して来たんですかぁ!?」
彼はもう耐えられず、絶望にくれる瞳に怨嗟を湛えて少女を睨みつけた。
「嘘をつくな! そんなわけあるか! じゃあなんの為にお前は俺を雛里の所に落としたんだよ! 世界が壊れるかどうかって時に、雛里の元に俺を送り出した意味がないとおかしいだろ!」
秋斗が跳ねるように食って掛かると、少女は少しだけ悲哀を瞳に浮かべた。
「ただのイレギュラーです。それ以上は言えませんね。とりあえず分かってない振りをするのは止めたらどうです? 大嘘つき」
最後のたった一言。それだけが秋斗を後悔と自責の絶望に突き落とすスイッチとなった。
力無く崩れ落ち、膝を着いて蹲った秋斗は自問自答を繰り返し、答えのない迷路へと迷い込んで行く。
曖昧な提示をされて、不十分な説明を聞いて、一度死んだ身で自分が変えなければ壊れる異世界に落とされて……何も指標を持たずに世界を変えようと出来るだろうか。
何かに縋らずに、普通に平凡に暮らしていた男が、現代で禁忌とされる人殺しを行い続ける事が出来るだろうか。
関わらなければ死ぬ事が決まっている少女と出会って、敗北が決まっている王と出会って、その因果を変えてやろうと思わないだろうか。
如何に好きに動いていいと言われようと、一度きりの時間と一つだけの命なら、少ない可能性に意識を向けてしまうのは詮無きこと。
彼はただ、自分の判断に従っただけ。世界の外の理によって思考を束縛されただけ。たった一つの可能性に賭けていただけ。間違いか正解かも分からないモノを正解だと信じ抜いて進んできただけなのだ。
しかしその判断が間違いであったと示されたなら……彼は過ちを知らずに踊り続けてきた道化に過ぎない。
怨嗟の声が先程より強く頭に響き始める。白昼夢がよりリアルに映し出されていく。しかしこの世界では……気絶する事など許されなかった。
「絶望に堕ちきる前に忘れないよう心に刻んでください。お前は曹操の元に行っていいんです。まあ、これまで殺してきた人も、死なせてきた人も、全てが無駄になりますけどね」
その言葉は秋斗の心を切り刻んだ。怨嗟の声はより深く、彼の頭を侵食していく。
大きくも小さな背を見つめる少女は絶望に打ちひしがれて蹲っている秋斗に対して……無慈悲だった。
「せっかくですからソレもカタチにしちゃいましょう。ふふ、こんなふうに」
指を一つ鳴らすと……彼にとって怨嗟の象徴たる女が目の前に姿を現した。
その女はグイと秋斗を無理やり立たせて、渦巻く憎しみのみを映した
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