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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十五話 〈帝国〉の逆襲
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きます。上手く使えば正面の聯隊を潰走に追い込むこともできるでしょう」
 報告する此方を見ないだけでも多少はマシな気分になれるが、一転した戦況がそれを補ってあまりある負担をかけてくる。

「いや、このまま攻勢を続けるにも砲の支援が無ければ話にならん。龍州軍の再編が完了する明日まで我々も防戦を行うしかなかろう。後は――ふむ。そうだな――試す価値はあるか?」
 西州公爵家の宿将は予備部隊の配置図を眺め、何事かを呟いている。
「閣下?」
 荻名が問いかけようとすると司令部の扉を叩く音がした。

「司令部導術長、白野大尉入ります!」
いつもより顔色の悪い導術士官が司令部に駆け込んできた。
「何か!」
 想定された状況とその対処法を脳裏で組み立てる。
 もし敵が逆襲に転じたとしたら――
「その、守原英康大将閣下からの通信です」
 白けた空気が司令部に流れた。
真夏にぬるま湯を浴びせられたかのように不快そうな視線を向けられた白野大尉が苦虫を潰したような顔で司令官に向き直る。
「閣下、よろしいでしょうか?」
西津忠信伯爵中将は岩盤を削り出してつくられた洗濯板の如く無数の皺を刻み込んだ厳つい顔から大量の空気と共に憂鬱を排出し、開戦以来最も不本意であろう命令を発した
「――読み上げよ、あぁこの場でいい」


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