彼女は雛に非ず
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私のせいだ。私が慢心していたから、簡単に考えていたからこんな事になってしまった。
こんなに苦しむなんて思わなかった。ここまで壊れるなんて思わなかった。『私』さえ見てくれないなんて思わなかった。
優しいはずの瞳は『私』を映していなかった。濁り切った瞳は何も映していなかった。あるのは絶望だけだった。
涙が溢れて止まらなかった。自責と後悔と心配と不安と悲哀と絶望と嫌悪と憎悪と苦悩と憐憫と焦燥と……抑える事もしなくなった膨大な愛情が混ぜ込まれた心は渦巻き続けるだけだった。
でも……ここで私が取り乱しちゃダメだ。この先のこの人を助けられるのは私だけだ。
このままここに居たらこの人は壊れて行くしか無くなる。人である事を辞めるしかなくなってしまう。
この人が今までしてきた事は無駄だった。桃香様には真の平穏は作れない。
もういい。この人さえ幸せならそれでいい。
どれだけこの人が耐えてきたのか
どれだけこの人が信じて来たのか
どれだけこの人が苦しんできたのか。
この人の優しさを失わせたくない。
もう傷ついてほしくない。
もう心を砕いてほしくない。
私の大好きな人。
私の愛しい人。
今後、私が当たられてもいい。
憎んでくれていい。
苛立ちをぶつけて軽くしてくれたらいい。
好きなように弄んでくれてもいい。
気が紛れるならそれでいい。
少しでも楽になってほしい。
だからもう何も、他の王の代わりに背負わないでほしい。
この人のために今出来る事を。この人の為だけの鳳凰に――
†
秋斗は耐える事が出来なかった。怒りに身を任せて桃香を責めるか、愚かしく自身を偽り続けて……自分に敵対を示すかもしれない、と華琳は考えていたのだ。
しかし……彼は自責の鎖がその身に食い込んで壊れて行った。隣に侍る彼自身を支える王佐、同時に愛しい存在であるモノの声にすら心が救われないままで。
美しく、愚かしい……華琳の心に来るのはそんな想い。
――その在り方、その心……他者の為に己を砕く存在は誇り高い。我欲よりも優先するべきモノを選ぼうとして、自分が壊れていくなど並大抵の人間に出来る事では無い。全てが無駄になるとは、どれほどの痛みを齎したのか。
目が覚めた時に癒してみせよう。包み込んでみせよう。そうすればお前は救われる。私がお前の代わりに全てを背負ってあげる。
華琳の目に映るのは、哀しくとも目を惹きつけられる光景。
一人の少女の泣き叫ぶ声が天幕内に響いていた。身体を重ねて、強く抱きしめて、たった一人の名を呼び続けていた。
桃香と愛紗が近づいても、彼女は睨みつけてその手
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