彼女は雛に非ず
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」
言われて思考に潜る華琳と桂花に対して、季衣は愛らしい笑顔を雛里に向ける。
純真な心に触れた雛里はほっと安堵の吐息を漏らした。
「うん、そうだよ季衣ちゃん。二人は私の大切なお友達。……少し耳を寄せてください」
一つ返事をした後に、三人は耳元で、
「二人の名は――」
彼女達にとって驚愕の真実を告げられ、華琳は一つの場面を思い出す。
――そうか、洛陽で徐晃が霞に放った言葉の意味はそれだったのね。敵だからこそ、私が傍にいたからこそ霞に全てを伝える訳にはいかず、ただ生きているという事実だけを伝えた。存外、徐晃は甘い男なのね。しかし……こんなに嬉しい誤算があるとは思ってもみなかった。
華琳の胸の内に来るのは歓喜であった。
かつて自身が諦観の元に切り捨てた一人の王が未だ生きていて、思わぬ所から出会える事になったのだから喜ぶのは当然。野心渦巻く乱世の始まりに於いて、洛陽に一人だけ向かった誇り高い英雄をずっと求めていたのだ。
元から月と詠は秋斗が向かう所に着いて行くと雛里には話しており、華琳の元に行くのなら霞が居る為に存在を明らかにしなければならないと決めていたから、華琳に守って貰う為に打ち明けたということ。
「分かったわ。その二人の身の安全は私が保障する。この戦が落ち着いたら直接二人と話してどうしたいかを決めで貰いましょうか。
……雛里はそれが終わったら必ず私の天幕に来ること。それまでは……鳳凰で居なさい。もうすぐ親衛隊の待機場所まで着くから季衣は雛里の護衛をしてちょうだい」
「ありがとうございます」
「分かりました! ひなりん、ボクが絶対に守るから安心してよ!」
「季衣ちゃんもありがとう。では、行ってきます」
ペコリと一つお辞儀をして雛里は駆け、その横に季衣も並んで行った。華琳はその背を優しい瞳で見送っていた。
「桂花、諸葛亮の代わりにあの子と並び立ち、伸ばし合って支え合うのはあなたの役目よ。時間が経ったら後悔と自責の傷が痛むようになるでしょうからしっかりと気に掛けてあげなさい」
いつものように御意と返した桂花の表情は喜び。
華琳に自身が朱里に負けない軍師だと示されて歓喜していた。従った者を分け隔てなく愛する主が誇らしかった。そして、孤独な王を支える才豊かな者が増えた事が何よりも嬉しかった。
「さて、公孫賛くらいには会っておきたかったけれど……そうね、きっとアレは徐晃を信じる。雛里はそれまで見越して最後の言葉を残したのでしょう」
「はい。徐公明離脱の予防線を張ると同時にどんな事態にも対応できるよう人心操作の布石を打ったと思われます。これで今回手に入れたモノは予定よりも大きなモノとなりました」
「……予定以上、か。ふふ、乱世とは本当にままならないモノね桂
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