彼女は雛に非ず
[9/19]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
たのはその為です。美周嬢であればそのくらいの思惑は看破してくるでしょうから」
「ふふ、劉備軍にいる内から私達の為に働いていたかに見えるけれど……結局こちらの被害が増えて、徐晃が後々裏切るなら劉備軍はタダで通行できるという事だから私にほとんど利が無かったのね」
華琳は言いながらも楽しそうであった。一度手に入れたのなら自分の元から離れさせるつもりなど毛頭ない、という自信が溢れ出ている。
雛里は少しだけ泣きそうになった。主が臣下の才を正しく評価して用いる軍に大きな安心感を感じて。華琳ならば彼を従わせる事が、重荷を代わりに背負えるのだと感じて。そして……華琳がどれだけ孤独かを理解してしまった為に。
それを人の心の機微に聡い華琳が見逃すはずも無く、優しく微笑んで雛里の頭を撫でた。
「雛里は今から私の天幕に来なさい。少し話をしましょうか」
自分の事を気遣ってくれる心は嬉しくとも、華琳は弱さを見せる事は無い。
雛里の心を案じて、弱さを吐き出させて受け止められるようにと提案した。
一人の少女に戻りかけた雛里は、そんな華琳の気遣いを間違う事も無く、今はまだ軍師でいようと零れそうになる涙を抑え付けた。
「……か、華琳様、申し訳ないのですが個人の時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「劉備軍の陣内でまだする事があるのね?」
「はい、彼の御付きの侍女が二人いますのでその子達も曹操軍に連れて行きたいんです」
桂花はその言葉を聞いて不快げに顔を歪めた。秋斗の在り方が華琳に近いが為に、所詮は下半身のだらしない男であるのだという判断を下してしまった。
華琳も若干の不快感が込み上げて来て眉を顰める。秋斗の事を評価しているからこそ、大抵の下卑た男と同じように肉欲が前に出る者であるとは考えたくなかった。
季衣はただ一人、何故華琳と桂花が不機嫌になったのか分からずに首を傾げた。
「構わないけれど……雛里が直接話に出すくらいなのだからただの侍女ではなさそうね」
それは探りの言葉。秋斗にとってその二人がどのような存在なのか。先の席であれほど慕う男の為に泣き叫んでいた少女が連れて行きたいというほどの二人なのだから、疚しい所は無いはずだと希望を込めて。
黄巾時代に華琳と桂花の嗜好を聞いていた雛里は、漸く二人が訝しんでいる意味を理解して慌て始める。
「し、秋斗さんは獣欲に振り回される人では無いですよ。劉備軍内で誰ともそんな関係を持った事は無いと彼に近しかった副隊長さんからも聞きました。
彼に生きて欲しいと懇願されて、生きるなら彼の作る世界を見届けたいと言ってくれたんです。願いを持って彼を支えようと傍に居てくれる子達なんです。私も彼女達に支えられていましたけど」
「うーん……結局ひなりんが仲のいい友達って事だよね?
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ