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渦巻く滄海 紅き空 【上】
七十二 前夜
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、徹夜続きであるシズネに休息を取るよう促す。

しぶしぶ休憩所へ向かうシズネの背中を見送ってから、綱手は当初自身が思い当った事を改めて口にした。その小声は、既に遠く離れたシズネの耳には入らない。
「…―――私以上の医療忍者がいなければの話だけどね」


アマルが寝入る病室の扉を一瞥し、綱手もまた白一色の廊下を遠ざかってゆく。
どこからか漂ってきた薬品の微かな香りが、病院特有の匂いに雑じり、やがて消えていった。

















夜の帳もすっかり下りた城下町。

今からが本番だと賑わう歓楽街の明るさに対し、街並みを一望出来る小高い丘は暗く、立ち木が疎らに生えている。
奇妙な事に、それらの木は何れも変わった模様の木目を成していた。木肌の渦模様は大小と大きさも異なり、果てには抉れているものまである。

突如、凄まじい風が吹き荒れた。

突風に煽られ、木々の枝々がざっくりと折れる。風は一瞬で止み、再び静寂が訪れた。後に残ったのは、荒い息遣い。
そして、夜にしては眩い金の髪が地に大きく広がっていた。


「……くっ」
ギリリと唇を噛み締める。手を上げようと力を入れるが、腕すら持ち上がらない。横になったまま、首を動かしてみると、手は指先から肘に掛けて小刻みに震えていた。
「経絡系に負担がきとる。チャクラの使い過ぎだのう」

不意に影と共に呆れた声が落ちてくる。見上げれば、彼女の師が苦笑を漏らしていた。
「全く。宿にも帰らずに修行とは…」
そう言いながら手を覗き込んだ自来也はひっそりと眉を顰めた。
弟子の手のひらは火傷で真っ赤に腫れ上がっている。その傷跡から、どれだけ高密度のチャクラを練り続けているのかが窺えて、内心自来也は感心していた。


今現在、弟子のナルが必死になって会得しようとしている術は【螺旋丸】。
難易度Aランクの超高等忍術であり、これを会得するには三段階の修行を乗り越えなければならない。

まずは第一段階の『回転』。
片手に持った水風船の中でチャクラを乱回転させ、水風船を割る修行。これは拳上に集中維持したチャクラを放出し続け、その上で押し掻き回す……要はチャクラの流れを作っているのだ。

次に第二段階の『威力』。
第一段階同様チャクラを乱回転させて割る修行だが、割る対象は水風船ではなくゴムボールである。水風船と違い、ちょっとやそっとじゃ割れない硬いボールを割るには第一段階以上に威力が必要となる。必要な箇所のみに集中維持して、最大威力でチャクラを乱回転させる修行だ。

そして最後の第三段階『留める』。
これが今現在ナルの頭を悩ませている修行である。
第二段階で成功した最大威力の乱回転を、今度は一定の大きさに留めなければならない。こ
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