プロローグ
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「これ■り、■泉中■校対山科■■■の試■を■じめ■■す」
ところどころノイズのような音に呑まれうまく聞き取れなかったものの、これから試合をすることだけは理解できたし、自分にはそれだけ分かれば十分だった。
「━━━━━━」
相手の選手━━━顔が見えない━━━が手を差し出してくるが握手ではない。まるで長年連れ添った相棒みたいに相手の求めているものが理解できた時には片手を振ってタッチを交わし、自分の持ち場へと歩いていく━━━━途中気付いた。周りの選手達の胸が大なり小なり膨らみがあることに。
慌てて自分の姿を見下ろせば自分の胸にも筋肉ではない膨らみがあった。
あったが━━━━。
(そんな事よりジャンプボールだ)
わりかしどうでもよかった。
それよりも今は大事なバスケの試合開始直前だということ。その緊張感があればいい。
ボールを構えた審判の前で相手選手と向かいあって身体に力を溜め込む。
その拍子に金色━━━━黒じゃ無かったか?━━━━に染まった自分の髪がちらりと見えたが、やはりどうでもいい。
今この瞬間だけは、もう“二度と体験できない“感覚に浸りたい。
「■■■■■■」
いままでノイズ混じりだった声がとうとう聞こえなくなった。
それでも意識はボールに集中し━━━━。
「■■■■■■!!」
真上に放られたボールを追うように跳躍。落ちてきたボールに手を伸ばし━━━━。
「……ッ……」
覚めた。
(……夢か……)
さっきまで感じていた緊張感が霧散していくのを寂しく思いながら、かろうじて動く首を傾ければ家族や親戚の顔が見えた。皆一様に顔を俯け、すすり泣いていた。
「なんだ。目を覚ましたのか」
が、例外もいるようでベットのすぐそばにいる眼鏡を掛けた男だけはいつも通りの無表情だったが。
「……いたのか……亮二」
「あぁ、血縁があるわけじゃないがな。お前の最期だ。無理を言って入らせてもらった」
「……ゴホッ……腐れ縁か……」
「まったく……厄介な腐れ縁もあったものだな。当時はこんなところまで付き合いが続くとは思わなかった」
こいつ━━━━新井 亮二との付き合いは中学から。自分はバスケットという競技に魅せられて、この男は部活ならなんでもよかったという理由で同じタイミングで入部届けを出したのがきっかけ。それ以降自分はC(センター)、こいつはPG(ポイントガード)として一年から県を、全国をまったく馬が合わないまま互いに罵り合いつつ戦い抜き中学を卒業。そこで終わらず自分は特待生として、こいつは将来とやらを見据えて選んだ
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