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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第88話 カトレア
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う言った後、視界を遮って居た自らの身体を脇……内開きの扉の向こう側に避けた。

 ガラスが非常に高価な代物の為に、戸板に因り塞がれた窓から明かりが漏れて来る事もない室内は、村長が持つランプのみが唯一の光源として存在するだけで薄暗く……。
 粗末な……。目立つ家具や調度品が備えられていない部屋は寒々とした雰囲気で、その部屋の隅に押し付けられるように置かれた粗末なベッドと、その脇に置かれた質素な木製の椅子だけが、この部屋の特徴らしい特徴と言えた。

 その粗末な寝台の上に眠って居たのは……。

「ルイズ?」

 かなり暗い室内なのですが、これだけは見間違えようのない春の色彩を連想させる髪の毛。白いシーツの上に咲き誇る優美なしだれ桜。流石に、この剣と魔法のファンタジー世界でも、彼女以外に一度も目にした事のない髪の毛の色ですから……。

 しかし――
 しかし、其処に微かな違和感。閉じられた瞳から続く鼻梁の線。彼女が属する人種から考えても、やや白い……精気を失った頬から顎に掛けての線もかなり細いような気も。
 更に、身長に関して言うと、ルイズとタバサは十センチほどしか違いがなかったような気がするのですが、今、粗末なベッドの上で安らかな寝顔をこちらに魅せている少女は、それよりは少し身長が高いような気もするのですが。

 そう考え、更に目を凝らし眠れる美少女を見つめる俺。瞳に能力(ちから)を籠め、彼女の本質を見極めようとする。
 しかし、その瞬間、淡い春色の少女の枕元に動く白い影。

「あぁ、話し忘れていましたが、その少女の傍を離れようとしない白猫が居りまして」

 その白い影を認めると同時に、割と呑気そうな村長さんの声が聞こえて来る。
 そして、

「どんなに追い払おうとしても、それに餌をやっても食べようともせず、その少女の傍から離れようしない事から、そのまま好きなようにさせて居るのです」

 村長さんがそう言うと同時に、大きく伸びをした白いもふもふの毛玉が、突然、入室して来た俺たちの方を胡散臭げに見つめていた。
 ……いや、確かにその毛玉の見た目は白猫。耳はピンと立ち、尻尾は自らの胴体の部分と同じぐらいの長さを誇る。
 思わず抱き上げて、肉球をぷにぷにするか、喉の部分を指すってやりたくなる、尻尾の部分を除いた体長五十センチ未満の成猫……と言うには小さいし、子猫と言うには少し大きい白猫。

 大きな欠伸の後に、しなやかな身体を体重の無い者のように閃かせ、ベッドの上……そのピンク色の髪の毛を持つ少女の枕元から、足音も立てずに木の床に降り立つその白猫。

 そうして、妙に人間臭い表情で突然部屋に侵入して来た俺たちを一瞥した後、

「久しぶりやな、ハク」

 何処からか聞こえて来る覚えのない少女の声。俺
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