第5章 契約
第88話 カトレア
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ギコチナイ笑顔だったのかは、鏡を見た訳ではないので不明なのですが。
そして、
「いえ、アブラハム村長。そのような御気遣いは無用ですよ」
……と言葉を続けた。
そう、確かこのルルド村の村長さんの名前はアブラハム。
白髪、それに白い髭の老人。アブラハム村長。そして、少し信用の置けない雰囲気のラバンと言う男性。ついでに、この街はルルド。
……どうも、地球世界で一番読まれた書物や、それに由来する宗教に関係した名前が連発して来ているのですが。
もっとも、これは単なる偶然でしょうが。
そう考えながら、但し、そんな事は表面上に表す事もなく、
「確かに、吸血鬼の中には鏡へと映らない種類の吸血鬼も存在して居ますが、この村の住人を襲って居るのはそう言う種類の吸血鬼ではないでしょう」
……と非常に冷静な答えを返す俺。年齢から来る信用度の低さを、魔法使いであると言う社会的信用度と、落ち着いた冷静な答えから払拭しようとする雰囲気。
それに、そもそも屍食鬼すら吸血鬼の一種に加えるのならば、コイツら……。吸魂鬼や吸精鬼も吸血鬼の一種として考えても問題はないでしょうから。
このハルケギニア世界では。
ゆっくりとひとつ呼吸を行い、少し場を落ち着かせる俺。妙にザワザワとした雰囲気ながらも、安堵と言う色で落ち着きを見せ始める村人たち。
「鏡に映らない類の吸血鬼に襲われた被害者は首筋に噛み痕などの傷痕が残らず、更に、その死も眠るように訪れる者がほとんどです。しかし、この村の犠牲者たちはすべて、身体中の液体と言う液体を奪われた上に、内臓の一部まで失って居ます」
これは、実体を持たない……人間から精気や魂を奪うタイプの吸血鬼などではなく、実体を持ったタイプの吸血鬼に襲われた犠牲者の特徴。
まして、この鏡に映らないと言う伝承は、本来は『悪人は自らの事を客観的に見る事が出来ない』と言う教訓的な教え。
他人から血(財産)を奪って行く吸血鬼(貴族)が、自らの事を庶民がどう見ているかなんて考える訳は有りませんから。
ついでに、吸血鬼……。いや、吸血行為が地球世界の十字を象ったシンボルの宗教に何故、嫌われたかと言うと……。
彼の宗教が浸透して行った頃のヨーロッパには、未だカニバリズムが深く根付いて居り、それを払拭する為に宗教的に禁忌として定めた、と言うのが通説と成って居ます。
もっとも、十字軍の遠征の際に彼の宗教的に言うと敬虔な信徒の行った蛮行の中には、その禁忌に触れるカニバリズムが存在して居り、こんな嘘八百を簡単に信用するほど、俺は能天気に出来てはいないのですけどね。
そんな、口では吸血鬼の種類に関する説明を行いながらも、思考の部分ではまたもやダッチロール状態と成
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