暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
弄ばれた2つの心
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ルーシィは駆け出した。
レイラがそれに答えるように、右手を上げ―――――




「っ大空風流(アリエスカレント)!」





突如、ルーが風の流れを操った。

「え?」

思わずルーシィの足が止まる。
風の流れが左へ変わるのを、ルーシィは自分の髪が靡く事で確認した。
刹那。

「!」

空を切るような音が聞こえた。
それと同時に、何かが刺さるような小さな音。

「・・・え?」

嫌な予感がした。
恐る恐る、ルーシィは顔を左へと向ける。
そこには、壁があった。



「ナイフ・・・だね」



――――――ナイフが刺さった、壁が。

「あれ・・・外れちゃったか♪いや、外されちゃったか」

無邪気にそう呟くのは―――――レイラ。
母親の声で紡がれた残酷な言葉に、ルーシィの目が信じられない物を映すかのように見開かれる。
ルーシィを守るように斜め左に立ったルーは、垂れ気味の目に鋭い光を宿した。

「君は誰?・・・ルーシィのお母さんじゃないみたいだけど」

その声色が静かに変わった事に、ルー自身気づいているだろうか。
ゆっくりと、小犬が牙を剥く。

「キャハハハハッ!ようやく気付いたんだ!遅いねー・・・待ちくたびれたよ」

ニィ、と。
レイラの顔が、歪む。
その微笑みは先ほどまでの優しい物ではなく、悪人の顔。
誰かを苦しめる事が楽しくて仕方ないといった様子の、悪を煮詰めて顔に塗ったような表情。

「さーてとっ・・・この体はもう飽きたし、いいや」
「?何を・・・」

ルーが尋ねようとした瞬間、レイラの瞳からハイライトが消える。
がくっと力なくその体が倒れ―――――ふわり、と砂になって消えた。
そのレイラの体から、紫の光が飛び出る。

「何、あれ・・・」
「解んない・・・」

くるくると舞うように飛んだ光は、どこかへと飛んでいく。
その光を無意識のうちに目で追いかけた2人の目に、1人の女性が映った。

「ふー・・・やっぱ自分の体が1番落ち着くね。1番人の苦しみが伝わってくるしっ♪」

ボサボサ髪に、垂れた目。
口元は弧を描き、一見優しそうな人の印象を与える女性。
だが、実際には優しさなどとは無縁の場所にいる。

「コイツ・・・血塗れの欲望(ブラッティデザイア)!?」
「残念!アタシは村を滅ぼしちゃいないさ」
「っ・・・!」

ルーシィの言葉に、女性は肩を竦めて首を横に振る。

「正規ギルドに名乗るってあんまりいい気分じゃないんだけどねー・・・ま、いいか。冥土の土産って事で教えてあげるよ」

先ほどまでレイラがいた場所に、女性が立つ。
口角を上げ、垂れた目に残酷で冷酷な光を湛え、女性は己の名を口にした
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