弄ばれた2つの心
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ルーシィは駆け出した。
レイラがそれに答えるように、右手を上げ―――――
「っ大空風流!」
突如、ルーが風の流れを操った。
「え?」
思わずルーシィの足が止まる。
風の流れが左へ変わるのを、ルーシィは自分の髪が靡く事で確認した。
刹那。
「!」
空を切るような音が聞こえた。
それと同時に、何かが刺さるような小さな音。
「・・・え?」
嫌な予感がした。
恐る恐る、ルーシィは顔を左へと向ける。
そこには、壁があった。
「ナイフ・・・だね」
――――――ナイフが刺さった、壁が。
「あれ・・・外れちゃったか♪いや、外されちゃったか」
無邪気にそう呟くのは―――――レイラ。
母親の声で紡がれた残酷な言葉に、ルーシィの目が信じられない物を映すかのように見開かれる。
ルーシィを守るように斜め左に立ったルーは、垂れ気味の目に鋭い光を宿した。
「君は誰?・・・ルーシィのお母さんじゃないみたいだけど」
その声色が静かに変わった事に、ルー自身気づいているだろうか。
ゆっくりと、小犬が牙を剥く。
「キャハハハハッ!ようやく気付いたんだ!遅いねー・・・待ちくたびれたよ」
ニィ、と。
レイラの顔が、歪む。
その微笑みは先ほどまでの優しい物ではなく、悪人の顔。
誰かを苦しめる事が楽しくて仕方ないといった様子の、悪を煮詰めて顔に塗ったような表情。
「さーてとっ・・・この体はもう飽きたし、いいや」
「?何を・・・」
ルーが尋ねようとした瞬間、レイラの瞳からハイライトが消える。
がくっと力なくその体が倒れ―――――ふわり、と砂になって消えた。
そのレイラの体から、紫の光が飛び出る。
「何、あれ・・・」
「解んない・・・」
くるくると舞うように飛んだ光は、どこかへと飛んでいく。
その光を無意識のうちに目で追いかけた2人の目に、1人の女性が映った。
「ふー・・・やっぱ自分の体が1番落ち着くね。1番人の苦しみが伝わってくるしっ♪」
ボサボサ髪に、垂れた目。
口元は弧を描き、一見優しそうな人の印象を与える女性。
だが、実際には優しさなどとは無縁の場所にいる。
「コイツ・・・血塗れの欲望!?」
「残念!アタシは村を滅ぼしちゃいないさ」
「っ・・・!」
ルーシィの言葉に、女性は肩を竦めて首を横に振る。
「正規ギルドに名乗るってあんまりいい気分じゃないんだけどねー・・・ま、いいか。冥土の土産って事で教えてあげるよ」
先ほどまでレイラがいた場所に、女性が立つ。
口角を上げ、垂れた目に残酷で冷酷な光を湛え、女性は己の名を口にした
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ