弄ばれた2つの心
[2/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
少し考え込む。
「そうね・・・やっぱり、定番は最上階かな。塔じゃなくて屋敷みたいなのだったら隠し扉の奥とか、地下とか」
「うーん・・・隠し扉っぽいのはないけど・・・」
「・・・あのねぇ、隠し扉なんだから見ただけで解る訳ないでしょ」
ルーシィの言葉にルーは辺りをきょろきょろと見回す。
どうやらルーは隠し扉の意味をちゃんと理解していないようだ。
「・・・ん?」
すると、ルーが足を止めた。
スッ、とその顔が真剣みを帯び、垂れた黒目に鋭い光が宿る。
突然足を止めたルーに目を向け、ルーシィも足を止めた。
「?どうしたのよルー、行くわよ?」
「待って、ルーシィ・・・何か聞こえない?」
「え?」
言われて、ルーシィも耳を澄ます。
静寂が姿を現し、小さな・・・意識してもしなくても聞き逃してしまいそうなほどに小さな声が、耳に入る。
「・・・シィ・・・ルーシィ・・・」
「!」
その声は、ルーシィを呼んでいた。
ルーかと思い目を向けるが、ルーは声を聞き逃すまいと口を閉じ、耳に全てを集中させている。
しかも、この声はルーの声ではない。
高い所はルーに似ているが、これは女性の声だ。
そして―――――――
「え・・・?」
ルーシィは、この声を知っている。
幼い頃に何度も聞いた、温かくて優しい声。
「ルーシィ、どうしたの?」
「どうしたのって・・・何が?」
思わず目を見開いたルーシィの顔を、ルーシィより3段下にいるルーが覗き込む。
心配そうな表情のルーは、いつものテンション高めな声ではなく、落ち着いた年相応の青年の声で、呟いた。
「―――――泣いてるよ?」
指摘されて、気づく。
頬に触れると、指先が濡れた。
「あたし・・・泣いてる?」
「うん」
こくり、とルーは素直に頷く。
その瞳が、不安そうに揺れた。
「僕、何かした?」
「何か・・・って、ルーは何もしてないよ!ただ・・・」
「ただ?」
小さく足音を立てて、ルーが1段上がる。
ルーシィが泣いている事に、ルーは不安を覚えているのだ。
自分が泣かせたんじゃないか、と。
「・・・今の声、聞いたでしょ?」
「うん」
「あれ・・・ママの声なの」
「!」
今度はルーが目を見開いた。
ぱちくりと瞬きを繰り返し、ようやく口を開く。
「え?でも、ルーシィのお母さんって・・・」
「・・・7年前に、死んじゃったハズなんだけど・・・」
辛そうに、寂しそうに薄い笑みを浮かべるルーシィを見て、ルーの表情が不安から心配へと塗り替えられる。
もう1段、上がった。
先ほどまで3段あった差が、1段へと短くなる。
「気のせい、だったのかな・・・うん
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ