第二章
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第二章
親子連れが来た。まだ若い母親にそれと幼稚園児位と思われる小さな女の子だ。母親は女の子の手を握って笑顔で歩いている。その親子連れが前から来たのだ。
それを見てだ。ワラビはだ。
急に足を止めた。そうしてだ。
前に行こうとしなくなった。飼い主はそれに気付いたのだった。
「あれ?どうしたんだ?」
そのことをいぶかしむ。それまで普通に自分の横に歩いていたのに急に動かなくなってしまったからである。そしてだ。
子供がさらに近付くと。母親ではない。彼女の姿を見てワラビはそそくさと子供から距離を離した。お陰で飼い主の手と首輪をつなぐ縄が伸び切ってしまった。
そのうえでしきりに反対側に行こうとする。そこまで見てだ。
飼い主もわかった。ワラビは実はだ。
子供が嫌いなのだ。どういう訳か知らないが子供が嫌いだ。そしてそれからも子供が来るとそそくさと逃げていって後で何度も振り返る。そんなことを繰り返すのだ。
ワラビにも怖いものはあった。何と子供が嫌いだったのだ。そんな犬である。思えば不思議だがそれでもだ。飼い主はそんなワラビを散歩に連れて行き子供を見ると逃げる彼女に言うのだった。
「大丈夫だよ。僕がいるからね」
微笑んで自分の犬に言う。そうして散歩を続けてだ。今日もワラビを愛でるのだった。
犬の怖いもの 完
2011・4・11
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