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乱世の確率事象改変
彼は一人、矛盾の狭間にて
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めて、その姿が消えた頃に大きくため息を吐いた。

「秋斗殿の周りには見た目の幼い者が多すぎる」
「ふふ、まあ今度じっくり酒を飲みながら問い詰めてやろう」
「いいですな。雛里の事も含めて彼には全てを話して貰わなければ」
「あー、なんか前よりも距離が近かったもんな。とりあえず私達は鈴々の手伝いに行こうか。秋斗と昼飯のおかずを取り合いした話を聞かせてくれるって言ってたし」
「ほう……食事にうるさい秋斗殿とやりあうとは……鈴々は見所があるやも――」

 いつものように、白蓮と星は笑い合いながら行軍準備の為に歩み始めた。
 彼が無事に辿り着いた事が嬉しくて。これからは幽州の時のように……一人足りなくともあの時のような平穏が戻ってくるのだと実感しながら。
 ただ……彼女達二人は秋斗と雛里の事を知らなさ過ぎた。
 黒麒麟の願いが何であるのか、鳳凰の望みが何であるのかを知らなさ過ぎた。



 †


 秋斗と雛里の帰還報告が入り、天幕内は静寂に包まれていた。その兵は秋斗が余りにも傷だらけで、さらには徐晃隊が追随していなかった為に急ぎの報告を届けただけであり、指示されて来たわけでは無い。
 すっと目を細めた華琳は笑みを深める。自身の隊を置き去りにしてでも将と軍師の命を取ったのかと予測し、間違いなくこちら側の人間であると再確認して。
 桃香は直ぐに立ち上がって天幕を出て行こうとしたが……

「何処へ行こうというのかしら? 徐晃が詳しい報告の兵を寄越さなかったのだから自分で来るという事でしょう。あなたも王ならば、それ相応の態度で部下の帰還を迎えてあげなさい」

 椅子にゆったりと座る華琳に止められた。しかしそのまま、桃香は華琳を睨みつける。

「秋斗さんは仲間です。心配して何が悪いんですか。戦って抜けてきたなら、誰であろうと疲れているでしょう? 無理をさせない為に私が動くんです」
「仲間、ね。確かに徐晃と鳳統は傷ついて疲弊しているでしょう。それなら好きにしなさい……と言いたい所だけれどそういう訳にも行かないわ。ふふ、面白い提案をしましょう」
「……面白い提案?」

 今すぐにでも飛び出して無事を確認したい気持ちを抑えたまま、華琳を睨み続ける桃香。
 朱里は目を見開き、自身の思考に潜っていく。愛紗はぎゅっと拳を握って、秋斗がどんな状態か予測しているのに楽しげに話す華琳への苛立ちを堪えていた。

「ええ。先の交渉で示した対価はあなた達が治めた後の益州と荊州にしたけれど……もし、徐晃か鳳統が新しく交渉を望んだのなら無しでいいわ。そして私はその交渉の内容によっては対価を変える」

 桃香も朱里も愛紗も、華琳の発言に耳を疑った。三人の驚愕の表情を見て、満足したように頷いた華琳は続ける。

「先の交渉は余りにも中心人
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