彼は一人、矛盾の狭間にて
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然とした。何も言わずともお互いを分かり合う友とはこういうモノなのだと感じながら。
その横で白蓮はほっと息を付いていた。自身とは違い、部下を切り捨てても張りつめていない事を確認出来た為に。
雛里だけは顔を俯けて何も言わず、皆に見えないように秋斗の服の裾をクイと引いた。それを受けて秋斗は小さく苦笑する。
――分かってるよ雛里。陣の撤去が進んでるって事は曹操の提案を受けたって事だろう。俺が直接桃香に支払った対価を聞いて、他の誰かを払っていたなら曹操に独自交渉をしに行かないとダメだからな。
「こうして喋ってるのもいいんだが先に報告に行かせてくれ。桃香は何処だ?」
「桃香はまだ交渉用の天幕、右に真っ直ぐいった所に建てた其処にいる。何故かまだ曹操もそこにいるけど……兵に報告を任せた方がいいんじゃないか?」
ピクリと、雛里の肩が跳ねる。
――曹操さんがそこにいるなら……彼に対してより大きな絶望が皆の前で降りかかる。なら私は彼を支えないと。
秋斗は訝しげに白蓮を見つめるも、曹操が一緒に居るのなら好都合だと思い、同時に白蓮の気遣いの暖かさからふっと笑みを零した。
「いや、俺が直接報告したい。雛里は――」
「一緒に行きます!」
バッと顔を上げ、眉根を寄せて秋斗を見上げた。驚いたのは周りの四人。大人しい雛里がそこまで必死になるとは誰も思わなかったのだ。
「そうか。なら一緒に行こう。ごめんな皆、また後で話そう」
一瞬だけ、名残惜しそうな目で見まわしてから秋斗が歩き初め、雛里は月と詠に小さく首を振ってから目くばせを送る。後で必ず説明するから、というように。
そして星の横を通り過ぎながら、
「……ごめんなさい、星さん」
ポツリと一言零した。
星と白蓮はどのような結果となっても秋斗とは長い期間会えなくなる。結果を待たず星だけに言ったのは恋敵であったが故のこと。
星はその発言に勘違いの予測、彼と雛里が結ばれたかもしれないと考えて小さく喉を鳴らす。
――雛里に先を越されたか。まあ、その程度で諦める私では無いが。
白蓮は月と詠に近付き、秋斗の真名を呼んだ二人に話しかけた。
「二人は秋斗と真名を交換してるんだな。秋斗は変な奴だけど女に見境が無いわけじゃないからそういう関係じゃないのは分かってる。また今度、落ち着いた時に私の知らないあいつの笑い話を聞かせてくれ」
「……ありがとう。じゃあ今は作業に集中しましょ」
白蓮がにっと笑いかけて、ほっと息を付いた詠と月。
彼女達は今まで話した事が無く、白蓮は本城で騎馬隊の管理に精を出していた為に秋斗御付きの侍女であるくらいしか知らなかった。それでさえ本隊に到着してから初めて聞かされたのだ。
じーっと駆けて行く二人を星は見つ
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