彼は一人、矛盾の狭間にて
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の策に嵌り徐晃隊は全滅。敵の数は二万弱。ただ、大打撃を与えた上で橋を落としたのでこちらへの追撃は一日超の遅れを伴うと思われます」
皆が絶句した。当たり前の事だ。秋斗の部隊の数は七千と聞いていたのだから、全滅するなど有り得ない事であった。置き去り、と考えるのが妥当なのだ。
「そんな……あの徐晃隊が全滅したのですか!?」
「秋斗さん、本当なの?」
「全滅です。私が連れていた部隊は一人残らず忠義を果たしました」
愛紗も桃香も、秋斗が答えを返すと悲壮に顔を歪ませた。
朱里だけは悔しさを映し出していた。自身が嫌う夕の手腕から徐晃隊の全滅という結果になったと判断して。
――生き抜いて俺を助けろ、なんざ叶わない望みなんだ。あいつらはバカだから、俺の為に死んだだろう。俺の与えた命令を遂行した後、命を繋ぎ止めたなら生きようとするだろうが、あの高さの崖と渓流じゃ一人の生存も期待できない。だからバカ共……俺と一緒に世界を変えよう。
頭の内に彼らの楽しそうな笑い声が聞こえた気がして、秋斗は穏やかな表情に変わる。自分と共に、桃香による天下統一を成し遂げようと散って行った彼らに想いを向けていた。
徐晃隊の全滅報告は場の空気を最悪にまで落としていく。しかしただ一人、華琳だけはその報告に違和感を覚えていた。
「徐晃、あなたの連れていた部隊の数を教えて貰えるかしら?」
凛と鈴がなるように冷徹な声で問いかけられるも、秋斗はそちらを向かずに背中越しに喉を鳴らした。
「我らが軍の情報をあなたに教える事は出来ません。情報を得たいというのなら何を差し出して下さるのですか?」
ビシリと、空気が凍りつく。春蘭、桂花、季衣の三人は華琳の方を見ずに対応をする彼の、あまりにも非礼な発言に殺気を膨らませて行く。
しかし華琳は……うっとりと表情を綻ばせ、彼の大きな背を見つめてその思惑を読み解き始めた。
――交渉の結果をまだ聞かないと言う事は、やはり自分が何かを支払って対価を変える為か。いや……同盟が結ばれたかどうかを確かめているのか。本当にこの男は楽しませてくれる。
同時に思考を戦にも展開していく。徐晃の隊が四倍モノ袁術軍を退ける精強さを持ち、鳳士元を連れていながら愚かしく真っ直ぐに突っ切ってくるだけのはずがない。だというなら、袁家の策が上回ったということか、もしくは徐晃がわざと部隊の数を減らしていたということ。そう華琳は判断した。
「ふふ、三人とも落ち着きなさい。そうね、私達と劉備軍は同盟をしているわけでは無いのだから、そちらの事情に口を出すのはお門違いだったわ」
華琳が言葉を放つと桃香の表情が引き攣った。次いで、秋斗の伏せた顔をじっと見やる。
誰かを救いたくて仕方ない秋斗ならば自分と同じように同盟を願
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