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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
18.July・Night:『The Planet Wind』
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謂『馬族撃ち』で放つ銀の娘。その銃弾と砲声は余さず蛆を捉え、空中で汚物の塊に変えて地面の染みと叩き落とした。
 更に踏み込み、肉薄した彼女は銃口を突き付けた。それに、『妖蛆の秘密』は――――

『グッ……理解シタ。貴様ト我ニハ、埋メヨウノ無イ厳然タル実力差ガアル……』
「へぇ? 脳味噌まで糞尿(シット)舞踏(ダンス)してる割には、物分かりが良いみたいだね」

 嘲るように、降伏を受け入れた娘。くるくると回転させながら、その二挺拳銃を両腰のホルスターに仕舞った。

『――デアレバコソ、我ガ信念……奇襲ハ生キルノダ!』

 その背に向けて放たれた、蛆と蝿、臓物の触手。最早、躱しようのないそれを――――

「イア、イア、ハストゥール……」
『ナン――ダト!?』

 右手に番えた『トーラス・ザ・ジャッジ』――――生半可な切り詰め銃身(ソゥドオフ)よりも殺傷範囲が広い、散弾拳銃の五連撃が全て挽肉(ミンチ)に変えて。

「――――アイ、アイ、ハスター!」
『ギ――――ギャァァァァァァ!?』

 左手の『コンテンダー・アンコール』のライフル弾により、『妖蛆の秘密』を粉微塵と打ち砕いた。

「……汚い花火だ、ってね。やれやれだ、自殺志願者ほど救えないものはないよ」

 颶風と共に、再び拳銃を腰のホルスターに戻した彼女。全てを俯瞰するように、砕け散った『妖蛆の秘密』の紙片を踏みつけて。

「コレ以外は逃げられた、か……流石に、此処まで生き残った原本だ。簡単には消滅しないか」

 明らかに『書物』としては少ない破片に、初めて評価するように呟いた。

「――――――――」

 それを、至近距離の特等席で見守らされた嚆矢。生きた心地など皆無、いつ殺されても止む無しと穿った決意までしかけた程。
 渇き、張り付いた喉。他の、人外の主人公ならば、何か気の利いた事くらい言うだろう一場面。

「――――――――」

 そこで、彼は何一つ言葉を話す事も出来ずに震える。否、出来る方がどうにかしている。
 『無駄口を叩けば即死』の段で、意見するなど。

「へん、情けない奴……お前みたいな臆病者(チキン)、殺してやるまでもない」

 それを冷めきった眼差しで見詰めた後、娘は踵を返す。
 その掌に、()()()()()()()()()紙片を握って。

「じゃあな、人間……もう二度と、あんなものに手を出さないで生きるように心掛けなよ。ボクに殺されたくなかったら、ね」

 少しでも反骨の意思があれば殺す筈だった、呆気と怖気に囚われたままの嚆矢を他所に、逢魔の刻の宵闇に消えていったのだった。


………………
…………
……


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