第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
18.July・Night:『The Planet Wind』
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い、未成年の学生風情で出来る事は、大人の庇護の元で、次の子供をどう導くかを学ぶくらいのもの。歴史とは、そうやって繰り返してきたのだ。
――にしても、暗部か……やだねぇ、折角、明部の生活にも慣れてきたところだったのに。
つーか、俺だけオーバーワーク過ぎじゃね? 警備員、給料なんて無ぇのに……
斯く言う嚆矢も、そんな一人。偶さか救われ、拾ったその命でも、『他の誰かを救う』事を望むからこそ――
『行く当てがないなら、家の餓鬼になりゃいい。丁度――』
思い返したのは白い部屋、白いベッドの上。風にそよぐ白いカーテンと、頭を覆う白い包帯。
敗北により存在価値を失った彼を病院に運んだ、ある男の無愛想な仏頂面。その脇には、蛙を思わせる白衣の男。
『丁度、跡継ぎの男手が欲しかったんだ――』
虚ろな蜂蜜の瞳は、天井を見詰めたまま。頭を撫でる武骨な右手に、為されるがままになっていた……。
「……って、違う違う。何を恥ずかしい事を思い出してんだ、俺は」
そこで我に返り、頭を振って記憶を払う。幸いな事に、この薄闇の中ならば、誰にも照れた頬には気付かれなかっただろう。
「ならねぇぞ、ならねぇ。断じて、鍛冶師なんて時代錯誤なモンにはならねぇ。俺は公務員とか医師とか、そういうモテる仕事に就くんだ!」
口に出し、改めて決意する。正直、それで育ててくれた事に感謝はしているのだが、なりたいとまでは思わない。
その後ろ姿を見詰めて育ったからこそ、そう思った。
「今はそんな場合じゃないよな……進路は、三学期からで良い」
それは、もう少し先に持ち越しの話。今は、兎も角、目の前の問題に集中する。
――暗部と一口に言っても、一つの組織じゃない。俺が今回潜入する組織は、確か……
と、これから『潜入する組織』の名称を思い出そうとした刹那――――
「ッ――――?!」
覚えのある、紙音を孕む生臭い風が吹いた。
『フン、我ノ存在ヲ忘レタカ、伴侶ヨ』
「おまっ……送還した筈じゃ」
そうして、口許を庇った右手にいつの間にか握られていた、ずしりと重い鉄の装丁の魔導書――――『妖蛆の秘密』を認める。
『フム、確カニ星ノ吸血鬼ハ送還サレタ。シカシ、アレハアクマデモ、コノ【妖蛆ノ秘密】ノ意思ヲ体現スル為ノ走狗ニ過ギヌ……クク、ヤハリ気付イテイナカッタヨウダナ?』
「くっ……テメェ」
その蛭か蛆が吸い付くような感触に、再び寒気が帰って来る。本当に吸血されている訳ではないだろうが、その不快感は、やはり正気を削り取っていく蛞蝓の歯舌のよ
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